第12章 記憶
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次の日、泰葉は案の定
熱にうなされていた。
「うー…うーん…」
苦しそうにハァハァと呼吸を繰り返す。
身体は汗が流れる。
アオイとカナヲが懸命に看病している。
ア「泰葉さん、大丈夫よ。
しっかり!!」
その苦しさは、杏寿郎と天元の元にも伝わってきた。
部屋は離れていて声などは聞こえないが、蝶屋敷の慌ただしさで分かった。
天「…泰葉、苦しんでるみたいだな。」
杏「あぁ。出血が酷かった。
泰葉さんの瞬発力でも、あの帯を避けきれなかったのだろうか…」
天「あー…俺、結局泰葉が戦ってるの見れなかったわ。
一つ心残りがあったわ。」
あーっと、天元は悔しそうにしている。
杏「…宇髄、ずっと気になっていたんだが…
いつの間に泰葉さんを呼び捨てにする様になったんだ?」
そう言われて、天元はキョトンとした。
いつから…いつからだったかな?
天「あ、あれだ!泰葉がヤベェ奴に手を出されそうになった時。
あの時、俺が『泰葉は俺の嫁にする』って言った時からだ!」
そうだそうだ、と思い出して頷く天元。
杏「宇髄…泰葉さんは、店に出ていたのか…?」
天「親父さんから聞かなかったか?泰葉が売られた店は違法な店だったからな。
手順踏まずに、初見でも寝れるようになっていた。
俺は話をするために泰葉を買おうと思ったら、先客がいて、そいつが松本家の跡取りだったって訳だ。
アイツはイカれてんな。」
杏「泰葉さんは…アイツに何かされたのか…?」
天元は杏寿郎から殺気を感じていた。
天「いや、アイツが手を出す前に俺が止めた。
泰葉は生娘なままだ。安心しろ。」
杏寿郎は、手を出されなかったと聞いて安心した。
その様子をみて、天元も安心した。
杏「して、宇髄…。なぜ君が泰葉さんが生娘だと知っているんだ…?」
天「え…いやぁ…」
この状況で耳と首筋に息をかけ、その反応で分かったなど…
言ってはいけない気がした。
杏「そして、嫁にするとは…」
冷や汗が止まらない天元は静かに布団に入り、寝たフリをした。
お互いに怪我をしていなかったら…と思うとゾッとした。