第2章 無限列車
炭「生身の人間がだ!!傷だって簡単には塞がらない!!失った
手足が戻ることもない!!」
怒りに任せて炭治郎は叫ぶ
あの少年も致命傷なのに…
それでも怒りは収まらないのだろう。
泰葉は胸が痛くなった。
炭「そして煉獄さんの方が、ずっとすごいんだ!
強んだ!煉獄さんは負けていない!
守り抜いた!」
泣きながら膝をつく炭治郎。
すると、杏寿郎が口を開いた。
「もうそんなに叫ぶんじゃない。
腹の傷が開く。君も軽症じゃないんだ。
竈門少年が死んでしまったら、俺の負けになってしまうぞ。」
青年も喋っている余裕はないはず…
泰葉は、身体を支えるしかなかった。
杏「少年、こちらへおいで。
少し話をしよう。」
杏寿郎は炭治郎達を呼び、話を始める。
その内容は、遺言…と呼べるものだった。
言葉をなくす炭治郎達。
杏「心を燃やせ。胸を張って生きろ。」
そして泰葉の方に顔を向ける。
片目しか見えていない瞳は、やっぱり綺麗だった。
杏「…ありがとう。鬼殺隊でない貴女を戦わせてしまったのは、申し訳なく思う。
…やはり、あの弁当は君に譲るべきだったな。」
息も絶え絶えの中、ははっと笑う杏寿郎。
泰葉は目に涙を溜め
「貴方は沢山の人に大切に思われている…。だから、あんな鬼にやられて死んではダメ。
…焼き魚だって美味しかったわよ?ご馳走してもらったからかしら…。」
そう冗談を返した。
杏寿郎は視線を移す。
炭治郎達の先に、母の姿が見えた。
(俺は、ちゃんとやれただろうか。
やるべき事、果たすべき事を全うできましたか?)
と質問する。
(えぇ。立派にできましたよ。…………。)
最後に母が何かを言った気がしたが、杏寿郎はにっこり笑うとその場で意識を手放した。
炭「うぅ…煉獄さん…」
善「あの列車が倒れる時、衝撃を少なくするために、すごくいっぱい技を出しててくれたんだよな…」
伊之助もボロボロと猪の目から涙を流している。
炭治郎達は、「強くなりたい。ならなくちゃダメだ。」と強く決心した。
泰葉は杏寿郎を寝かせ、頭を自分の膝に置いた。
まだ微かに呼吸はある。
「青年、生きて…。」
泰葉はポロポロと涙を流す。
あぁ、鳩尾を貫かれるのは防げたのになぁ。
無力だな…。
目の前の命も救えないのか。