第11章 救出
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泰葉は夢を見ていた。
白くぼやけた世界。
目線の先には桜の木だろうか…
そこに誰か男女の姿がある。
「お父さん…お母さん…?」
泰葉は育ての父と母かと思い駆け寄る。
しかし、そこにいたのは見覚えのない顔だった。
「誰…?」
そう聞いた時、グニャリと世界が歪み
また違う景色となった。
広い日本家屋。
煉獄家にも似ているが違うところのようだ。
そこには先程の男女と、10歳くらいの女の子がいた。
女の子は泰葉に背を向けているので、顔は見えない。
その女の子に男女が話しかける。
「いいかい。今日伺うお家の方は、将来お世話になるお家だ。
…がお嫁さんに行くお家だよ。」
『そうよ、とても大切にしてくれる方たちだから、安心なさい。
お嫁に行くと言っても、まだまだ先。
今日はご挨拶だけだからね。』
その言葉に
「うん、父様、母様、行ってまいります。」
女の子は2人に寄って行き、ぎゅっと抱きついた。
それに応えるように抱きしめられる。
しばらくして、女の子はお辞儀をして振り返る。
桃色の着物を着て、癖のある肩までの黒髪。
緋色の髪飾り…
泰葉はその姿を見て目を丸くした。
「…私…だ。」
これは、夢ではなく記憶だ。
そして、あの男女は
「本当のお父さんと…お母さん…。」
泰葉は記憶の中で、ポロポロと涙を流した。
これは、私の家族の最後の日。
10歳くらいと思っていたが、正式には11歳。
西ノ宮家のしきたりで、10歳を超えると
別の一族の許婚を決める。
嫁ぐのは18歳になってから。
しかし、その前に女性の方から男性の家に赴き、挨拶をする。
それからは長く許婚の関係となる。
その挨拶に泰葉は向かっていったのだ。
「行ってまいります」
幼き日の泰葉は手を振り、車でその先へと出掛けていった。
両親はいつまでも手を振り続けていた。
これが娘に会う最後の日だと知っていたかのように。
そして、またグニャリと歪む。
すると、今度は辺りは暗く、夜の外にいた。
無限列車から出た時の記憶だ。
目の前には、黒子のような人に背負われたお婆さんがいた。
「あの、獅子のような青年が助けてくれたのよ。」