第11章 救出
お婆さんの視線の先には、炎の様な光と、砂埃。
泰葉は、あの先には杏寿郎達がいると分かっていた。
あの日の記憶だ。
私は、あの中に入っていった。
すると、自分が分身でもしたかのように、もう1人の自分が身体からすり抜け、その光の方に向かっていく。
あれは、あの日の私。
泰葉もその姿を追った。
すると、炭治郎と何かを話している。
そして、構えを取り炎の上がる中に飛び込んでいった。
杏寿郎と共に鬼と戦う自分。
そして、最後には逃げていく鬼の姿…
その動きはとても自分だとは思えなかった。
しかし、泰葉の中にその力はあるのだと示すように、沸々と身体が熱くなっていった。
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一方で
杏寿郎や、天元達が蝶屋敷にやって来たのは明け方過ぎ。
中々に帯を使う堕姫と、血鎌を使う妓夫太郎には骨が折れた。
5人全員が満身創痍だ。
天元は左目と、左手を失い
杏寿郎は、右足を骨折。
伊之助は心臓を刺されたと思われたが、内臓を動かしたおかげで心臓は免れた。
が、傷も深く、至る所の骨が折れている。
善逸は、両足を骨折している。
一番酷かったのは、炭治郎。
意識もなく、至る所に骨折、深い傷が見られ治療にも時間がかかった。
其々の怪我の酷さが、戦いの激しさを物語っていた。
天元の嫁3人は
雛鶴は解毒薬を飲んだので時間の経過で回復するだろう。
まきをと須磨も大きな怪我はなかったので、
みんな、自宅で療養することにしたのだった。
しのぶは炭治郎達の点滴を取り付け、天元と杏寿郎の病室へとやってきた。
し「とりあえずは生きていて何よりです。
煉獄さんは足の骨折以外はとりあえず大丈夫そうなので、足だけ気をつけてくださいね。」
杏「そうか!分かった!善処する!」
しのぶはいつも思うが、怪我をしたと思えない声量だ。
し「宇髄さんは…申し訳ないのですが、私の力では目と腕は戻せません。」
天元は自分の左腕を見る。肘少し下からがなくなっている。
天「あぁ、それは大丈夫だ。戻るもんだと思ってねえよ。」
自分の体の一部を失ったとは思えないほど、前向きな声色だった。
杏「宇髄、先程の話だが…」