第10章 覚醒
それは今までの2人の動きを追えていた泰葉にも分からなかった。
炭「ヒノカミ神楽 幻日虹」
高速の捻りと、回転による躱しに特化した舞。
視覚に優れた者程、よりくっきりとその残像を捉えてしまう。
炭「ヒノカミ…」
すると、堕姫との間にピンと張られた糸が見えた。
(見えた!隙の糸!)
「火車!!」
炭治郎が大きく振りかぶった瞬間
堕「遅いわね。
あくびが出るわ。」
プツンと糸が切れる。
堕姫の帯の攻撃が炭治郎を襲う。
堕姫から伸びる帯はいくつも炭治郎目掛けて、鋭く攻撃を仕掛ける。
炭治郎は刀で攻撃を避けようとするが、避けきれない。
衝撃をくらい、飛ばされる炭治郎。
( このままでは、このままでは
炭治郎くんが死んでしまう!!!)
その時、泰葉の中で何かが聞こえた。
『戦いなさい…』
沸々と力が湧くのが感じられる。
私は戦える。
私にはその力が備わっている。
目には見えないが、そう確信できるものがあった。
ヒノカミ神楽の連発で、炭治郎の体は疲弊して動けない。
しかし、体力の限界を知らない鬼は構わず攻撃をしてくる。
私が、
私がいかないと…!!!
泰葉は構えを取る。
グッと足に力を込め踏み込み、
堕姫に向かって飛びかかった。
一瞬で堕姫の、後ろへ入り込む。
「うおぉ!」
泰葉は右足を振りかぶり、思い切り堕姫の脇腹に蹴りを入れる。
堕姫は不意打ちを喰らい、建物の壁へと飛んでいった。
堕( 何…?なんなの…⁉︎誰よ!こんな事するの!)
泰葉はトンッと着地し、堕姫を見据えて構えを取り直す。
堕姫はむくりと起き上がり、大声を上げた。
堕「あんた何なの⁉︎
あんたも鬼狩りだったの⁉︎それなら早く喰べてしまえばよかったぁ!」
堕姫の様子はまるで駄々をこねる子供だ。
わぁわぁいいながら地団駄を踏んでいる。
(なに?子供?人格が2人いるの?)
そう考えていると、スンッとまた大人びた表情をする堕姫。
本当に二重人格のようだ。
堕「そう。
あんたも死にたいの。じゃぁ、痛めつけてから喰べてあげる!」
そういうと、無数の帯が一斉に泰葉目掛けて、仕掛けてきた。