第2章 無限列車
「お婆さん!」
泰葉が声を上げると、お婆さんが目を見開いた。
「おや!目が覚めたのね。あの獅子のような若者が助けてくれたのよ。」
お婆さんは目線を送った。
その目線を追ってみると、激しい炎と、光。その周りには砂埃が立っていた。
あれは…?
そう思った時には、泰葉はそちらの方向に走り出していた。
ザッ
炭治郎の隣に立つ泰葉。
激しい炎と光の方を見据える。
そして目を見開いた。
「あの人…!」
売店で会った青年!
その青年は激しい炎を思わせる剣技を繰り出し、傷を負っても再生する得体の知れないものと戦っている。
炭「あなた…!危ないです!ここにいてはいけない!」
炭治郎は早く避難するよう必死に呼びかける。
「だめ、右…」
泰葉はブツブツとつぶやく。
炭治郎達では桁違いすぎて、全く目が追いつかないのに対し、不思議なことに泰葉は杏寿郎と猗窩座の動きを見切ることができていた。
杏「炎の呼吸 伍ノ型 炎虎!!」
猗「破壊殺 乱式!」
確実に杏寿郎の攻撃は相手に入っているが、すぐに再生されてしまう。
一方で猗窩座の拳が右の肋骨に入る。
左目も潰されている。
おそらく口から血を吐いている様子からして、肋骨は折れて内臓もやられているだろう。
このままでは死んでしまう。
「少年、あの人はみんなの大切な人よね?」
炭「え?は、はい!」
突然の質問にたじろぐ炭治郎。
「あの得体の知れないものは悪いやつ?」
炭「アイツは人を喰らう鬼です!貴女は近づいちゃダメだ!」
泰葉には周りが見えていなかった。
このままでは青年は確実に死ぬ。
こんなに沢山の人に思われながら、得体の知れない鬼とやらに殺されてはいけない。
青年の攻撃は、力強く踏み込み、間合いを詰める攻撃の傾向がある。
相手はよく分からない術をかけてくるが、基本的には素手。衝撃派を駆使しているのは厄介だが、それさえなければいけるだろう。
泰葉はゆっくりと構えをとった。
その様子に驚く炭治郎。
炭「何を…ダメだ!生身の人間が!!」
「貴方達も生身の人間でしょう!!」
泰葉から想像できない厳しい声が飛ぶ。
きっと青年はギリギリだ。
次には捨て身の攻撃をするだろう。
近距離に来た時に互いにトドメを刺しにくるに違いない。