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恋い慕う 短編集

第2章 猫 (1)


着物に袖を通すと丈もちょうどよく色合いもりょうに合っていた

「うむ。ちょうどいいみたいだな」
「いいの?」
「あぁ、母はもういない。着てくれる者がいればそちらのほうがいいからな」

優しく笑う青年
どこか寂しそうにも感じた

りょうは着物を着付けまだ湿気ている髪を優しく拭いていく
すると青年はりょうの髪に触れる

「柔らかい髪だな」
「貴方のは硬そうね」

そう言ってりょうは手を伸ばし青年の髪に触れる
想像よりも意外と柔らかいその髪をそっと撫でる

「む、なぜ撫でるんだ」
「貴方が寂しそうにしてたから」

りょうの優しさに青年も表情が柔らかくなった

「もう昔のことだよ」
「愛する人が亡くなることは時間がたっても寂しいものだよ」

青年はりょうの儚げな表情に釘付けになる

「どうしたの?」
「あ、いや...なんでもない!そういえば名を名乗っていなかったな!俺は煉獄杏寿郎!君は?」
「りょう」
「りょう、か!りょうはあんな雨の中何をしていたんだ?」
「私は、居場所を探してるの」
「居場所を?」
「うん」

不思議な子だと思った

「杏寿郎は鬼を狩る人なの?」
「!何故それを...」
「私がよく知る人も同じ服を着ている」
「偶然だな!」
「ふふ、そうだね」

柔らかく笑うりょうの表情は可愛らしかった

その時ぐぅ〜とりょうの腹の虫が鳴く

「腹が減っているのか?」
「何も食べてないの」
「そうか!なら街まで何か食べに行こうか!」
「お金持ってない...」
「気にすることはない!ほら、行こう!」

また強引に腕を引かれ外に出ると
雨はすっかりと止んでいた
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