I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
「ネズミ花火ってあのクルクル回転するやつだよね?」
よく海とか駐車場でヤンチャな子がやっているイメージのある、クルクルと鮮烈な火花を上げながらすばしっこく跳び回る花火を脳裏に思い浮かべる。
「そうそう、東卍の奴らとやっても、やっぱアレが一番盛り上がるしな。」
タカちゃんはそう言うと、楽しそうにニカッと笑う。
そんなタカちゃんを見ていれば、自然と笑みが零れた。
「…え、俺なんか変なこと言った?」
目をぱちくりとさせて、クスクスと笑う私のことを不思議そうに見つめるタカちゃん。
「…ふふっ、何だろ。いつも一緒にいる時は全然そんな感じじゃないけど、タカちゃんもやっぱりヤンキーっぽいことしてるんだなーって。」
私がそう言って笑えば、タカちゃんは頬をかいて、「ヤンキーっぽいことって…」と苦笑した。
「でも、タカちゃんの友達はみんな本当にいい子達ばっかりだよね。やっぱ見た目で人を判断しちゃいけないなーって改めて感じさせられたっていうか。」
そう言えば、タカちゃんはハハッと笑う。
「みんな馬鹿ばっかで困るけどな。ほんと、いい奴らばっかだよ。」
「うんうん、何かそーゆーの、青春って感じでイイ!」
そうして、私たちは夏休みの課題は終わった?だとか、タカちゃんのお母さんってどんな人?だとか、そんな他愛もない話をしながら、キラキラと輝く花火を楽しんだ。
暫くして、流石に2人で全部の花火の本数を消化するには多すぎると残りの半分は今度ルナマナコンビも込みでまたやろうと持ち帰ることにして、線香花火を抜き出す。
「…よーし、私の可愛い子ちゃん、頑張れ!」
「ハハッ、俺の子猫ちゃんにはかなわないって。」
パチパチと可愛らしい音を弾けさせながら、徐々に大きく膨らんでいくまるで果実のような炎。
揺らさないように揺らさないようにと念じれば念じるほど、身体が小さく揺れてしまうのは何でだろう。
隣で座るタカちゃんは、何故か余裕そうな表情で微動だにしない。
月明かりに照らされたタカちゃんの横顔がカッコよくて、つい見惚れていれば、灼熱色に染まった可愛らしい炎がポトッと地面に落ちた。
「…………あ~~~~~~~!」
隣のタカちゃんの手元を見れば、まだパチパチと火花を散らしている火玉が見える。
「ハイ、俺の勝ちー。」
そう言ったタカちゃんの声が明るく響く。