I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
暫し2人無言で歩けば、目的の公園に辿り着いた。
団地の中の小さな公園。
流石にこの時間になれば、遊ぶ子供たちも誰もいない。
タカちゃんと出逢ってから公園に来ることが増えたな、なんて、自然と頬が緩んだ。
公園の草木のない平らな場所を見つけると、「…よし、この辺でいいか。」なんて、タカちゃんは繋いだ手をパッと離した。
離れた手のぬくもりを少し残念に思っていれば、タカちゃんが花火を置いてバケツに水を汲みにいく。
じゃあ私は蝋燭をと、コンビニで花火と共に買ってきたライターを手に取ってホイールを回すことに苦戦していれば、
「ハハッ、椿木さん、ライター似合わねぇな。貸してみな。」
と、楽しそうにクツクツと笑いながら、バケツ片手にタカちゃんがこちらに戻ってきた。
「ごめん、ありがとう」と言って私がライターを渡すと、タカちゃんは親指でホイールをガリッと回す。
「えー、一回で点いた!」
ライターの先端に点された煌々と輝く炎。
驚いたように私がそう言えば、タカちゃんは「ホイール回す時は勢いよくガッとやんねぇと。」と言って笑った。
そして、蝋を少し溶かして地面に固定すると、蝋燭に火を移す。
暗闇にゆらゆらと揺れる小さな炎が、何とも儚げに輝いていた。
「椿木さん、どれからやる?」
「ん~どうしようかな。…あ、これ色変わるやつだ!これにしよ!」
「お、いいじゃん。じゃあ、俺は見たことねぇコイツにすっかな。」
「お!いいね!私も初めて見たそれ!」
そうして、花火の先端に炎をつければ、シューッと閃光が飛び出しては、赤、緑…と鮮やかな色に変わっていく。
「わー!キレー!」
タカちゃんの方を見れば、バチバチッと私の持っている花火よりも大きくて弾けるような火花が勢いよく跳ねていた。
「ハハッ、何か夏の終わりって感じすんな。こうやってゆっくり花火してっと。」
タカちゃんはそう言って綺麗な顔で笑う。
「そうだね、夏休みももう終わっちゃうのかやだな~。…タカちゃんはどの花火が一番すき?」
「俺?…そうだなー…」
残っている夏休みの課題も急いで終わらせないとな、なんてほんの少し嫌なことを思い出してしまって咄嗟に話題を切り替えれば、タカちゃんはうーんと少し唸ったあとで、「強いて言うならネズミ花火。」と笑った。