I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
花火大会の後も、何だかんだで私とタカちゃんの距離感は変わらないまま…だと今の今まで思っていた。
別に今日までも、いつもと同じように一緒にご飯を食べて、いつもと同じようにバイクに2人乗りして、いつもと同じように下らない会話で笑いあってたから。
なのに、
この繋がれた手は一体全体どういうことなんだろう?
お互いに何も話さずに手だけ繋いでいる、その状況がひどくこそばゆい。
何となく気恥ずかしくて何かを話したいのに、こういう時はドギマギするばかりで、いつも思考回路は正常に働いてくれない。
高鳴る鼓動を感じながら、私の少し前を歩くタカちゃんの後ろ姿をぼんやりと見つめていれば、
『………嫌?』
『じゃあ、離さない。』
そう言って、少し不安そうな顔をした後に、嬉しそうに微笑んだタカちゃんの姿が思い出された。
ー友達以上恋人未満
私たちの関係を表すには、その言葉がひどくしっくりくる。
前を歩くイマイチとらえどころのないタカちゃんに、もしかしたら、私は弄ばれている、のかもしれない。
でも、なんでかな。
それでもいいよ、君の側にいられるのなら。
なんて。
あどけない恋心が安っぽい言葉を吐き出した。
でもね、タカちゃん。
ほんとのところはやっぱりね、
可愛いとか、綺麗とか、似合うとか、そんな優しくて曖昧な言葉じゃなくって、
私のことが "すき "ってそれだけ、その言葉だけがタカちゃんの口から聞きたいの。
もっと、私のこと、ちゃんと捕まえていてほしくて。
もっと、私のこと、心ごとぎゅっと強く繋ぎとめていてほしくて。
2人がこれからも、きっとずっと離れることがないように。
ねぇ、お願い、タカちゃん。
すきって言ってよ。
甘くて切ない静かな夜。
そんな私の身勝手な想いが空に舞った。