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I don’t want to miss a thing.

第1章 …I'll be there for you.



久しぶりに家族揃って夕飯をとったあと、お袋をゆっくりさせてやりたくて、いつものように皿洗いまで引き受ける。

皿を洗い終え、キュッと蛇口を捻れば、不意に着信音が鳴り響いた。

こんな時間に珍しいな、なんて思いながら、濡れた手を拭いて携帯を手に取れば、椿木さんの名前が表示されていた。

俺は思わず、頬を緩める。

「おー、椿木さん。どーした?」

通話ボタンを押して電話に出れば、『あ、タカちゃん!今大丈夫?』と鈴の音のような明るい声が響いた。

「おう、丁度、皿洗い終えて一息つこうと思ってたとこ。」

そう言って笑えば、電話の奥で椿木さんが安心したように『そっか、よかった』と笑った。

『突然なんだけど、今日この後暇?』

「暇だけど……何?デートのお誘い?」

椿木さんからの嬉しい問いかけに、俺が悪戯にそう聞けば、

『え!?!?デート?!?!…バッ!違ッ…もうッ!からかわないで!』

と、照れているのか怒っているのか、いやきっと半分半分な椿木さんの声が返ってきて、俺はクツクツと喉を鳴らす。

「悪ぃ。椿木さんが可愛くて、つい。」

『…また、そういう事言ってー!』

「ハハッ、ホントのことだから仕方ねぇじゃん。…で、暇だったらどうかした?」

反応が可愛いからついついからかいたくなんだよな、なんて笑いながら本題へと話題を戻せば、あーそうそう!なんて椿木さんの明るい声が響いた。

『今、コンビニで手持ち花火買ってきたんだけど、一緒にやらないかなぁーって!』

夏の終わりって何か無性に線香花火したくなるんだよね、なんて、電話越しに椿木さんはクスクスと笑う。

きっと今、椿木さんは少女のような笑みを讃えているんだろう。

そんな無邪気な彼女が可愛らしくて、俺はまた頬をゆるめた。

「なんだよ、やっぱデートのお誘いじゃん。」

椿木さんから誘われることって実はあんまりなかったりする。

それもあって俺はいつもより幾分か心が浮ついた気持ちになった。

『…だから違うってば!』

「ハハッ、いいじゃん、今から外出るわ。下でちょっと待ってろよ。」

逸る気持ちを押さえて、お袋の部屋に行けば、
お袋にぴったりくっつくルナとマナ、それから2人に本を読み聞かせているお袋がいた。
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