I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
一方、古びたアパートの一室には、
自室の机にデザインブックを並べて、スケッチブックに熱心に何かを描いている三ツ谷がいた。
真剣そのものの表情を浮かべた端正な顔。
その瞳には優しさと愛情が滲んでいた。
三ツ谷は、花火大会の日を境に、気が付くと凛子に似合いそうな服ばかりをデザインしてしまうというような日々を送っていた。
布屋に行けば『この色も椿木さんに似合いそうだな』と手にとり、デザイン集を眺めれば『こんなデザインも椿木さんに似合いそうだな』と心を弾ませ、凛子の笑顔を思い出しては、頭を捻らずとも自然とデザイン案が思い浮かんだ。
スケッチブックに何枚にも渡って描き残された繊細なタッチで描かれたデザイン画。
三ツ谷は暫くペンを走らせたあと不意に手を止め、ペラペラとスケッチブックを捲りながら、過去に描いたデザイン画を眺めては、
「……もしかして、最近の俺、ちょっと気持ち悪くねぇ?」
そう言って苦笑し頬をかいた。
「…まぁでも、好きな奴の可愛い姿が見てぇと思うのは誰だって一緒だよな。」
そして、頭の片隅に思い浮かんだ思考を、自身に都合の良い言葉で自己完結させると、また1枚スケッチブックを捲った。