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I don’t want to miss a thing.

第1章 …I'll be there for you.



一段と綺麗な椿木さんに見惚れるも束の間、「あ、タカちゃん?!」と聞き慣れた弟分の声が聴こえてきて、俺は一気に現実の世界へと引き戻されたような気分になる。

「タカちゃんたちも今日の花火大会行くの?!イイネ、一緒に行こうよ!」

「…はぁ……」

俺は人知れずため息を漏らしたが、八戒と柚葉の登場に隣で嬉しそうに満面の笑みを咲かせる椿木さんを見て、頭を掻いた。まぁ、ルナとマナもいるしな、なんて独り言ちる。

「ルナ、コーラ!」「マナ、イチゴ!」

「おー、お前らは2人で一個な。」

会場に到着するやいなや俺らは、すっかり熱のこもった身体を冷やすためにかき氷屋に並んだ。

八戒と柚葉には分担して焼きそばなど腹の足しになるもんを買ってくるように頼んである。

「ん~、かき氷の味っていつもすっごい悩んじゃうんだよね。タカちゃんはもう決めた?」

「ん?やっぱかき氷と言えば、ブルーハワイだろ。」

「あぁ~!ブルーハワイもいい!んん~でもグレープもいいしレモンとピーチも捨てがたい……」

目の前にずらっと並んだ氷用シロップを真剣な表情で眺めてはうーんと頭を捻っている椿木さん。

そんな彼女のことを横目で見て、俺は頬を緩める。

「ハハッ、なら、俺がブルーハワイとグレープ半々ずつかけてもらって、椿木さんはレモンとピーチ半々にすればよくねぇ?2人でシェアすれば全色食べれっけど。」

「…あー、確かに!それいい!タカちゃん、それでいいならそうしてもいい?」

「おう、俺はそれで構わねぇよ。」

「やったー!いつもありがとー、タカちゃん!」

俺が提案すれば椿木さんは嬉しそうにはにかむ。

そして、全員がかき氷を受け取れば、「花火、楽しみだね!」そう言って満面の笑みでこちらを見上げる椿木さん。

楽しそうに鼻歌なんか歌いながら俺の一歩手前を歩き出した椿木さんの後ろ姿をぼんやりと見つめていれば、ルナに「お兄ちゃん!早く早く!」なんて手を引かれた。

浴衣効果も相まって普段の何十倍と可愛い椿木さんとかき氷を持って歩く河川敷。

的屋の掛け声に花火大会の開幕を告げるアナウンス。

少し蒸し暑い気温に、頬に気持ちよい涼しげな夕風。

そんな、この夜を彩る全てのピースが俺の気分をひどく高揚させるようだった。

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