I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
椿木さんのために腕によりをかけて作った浴衣。
それを渡せば、予想以上に喜んでくれた椿木さん。
渡してから結構な時間が経つにも関わらず、「…うわぁ、タカちゃんって本当にすごいね!」だとか「これ作るのすっごい時間かかったでしょ…。忙しいのに、本当にありがとう。」だとか嬉々とした表情でこちらに賞賛と感謝の意を述べてくる椿木さんに俺は頬を緩めた。
椿木さんの、こうやって子犬みてぇに素直に喜ぶところ、本当にかわいいと思う
俺は机に頬杖を突きながら、満点の笑顔を咲かせた椿木さんの様子を眺める。
そうしていれば、ルナとマナとが無言で手を差し出してきたので、「ハハッ、ちゃんとお前らの分もあっから安心しろよ。」と2人用の浴衣を渡してやる。
そうすれば、「わー!可愛いー!」「お兄ちゃん、大好きー!」と言って、居間を走りまわるルナとマナ。
「オイ、お前ら、家の中は走んなっつってんだろ!下の人に迷惑になっから!」
いつもと変わらない日常の一コマ。
でも、そこに椿木さんがいるだけで特別なワンシーンか何かのように思えるから、椿木さんはやっぱすげぇと思う。
俺がルナとマナに声をなげかければ、椿木さんは何かを思い出したように、「…あ、ごめん、嬉しさのあまり、肝心なこと言うの忘れてた!」とこちらを向いた。
「花火!これ着てタカちゃんと一緒に見れるの楽しみにしてる!」
そう言って、花が咲いたようにふわりと笑う椿木さん。
俺はその綺麗な笑顔に一瞬目を瞬かせた後で、「おー、俺も楽しみにしてるわ。」と笑みを零した。
きっとこれから先、何年経ったとしたって
椿木さんのその柔らかい笑顔に、俺は何度だって恋をするんだろう。
ふとそんな柄にもないキザな台詞が脳裏に浮かんだ。
きっとこんなことを聞かれたら、柚葉あたりにまたキモイだとか何だとか言われるんだろう。
俺は目の前でルナとマナと楽しそうに喋っている椿木さんを眺めながら、まぁ、それはそれで悪くねぇか、なんて考えてはまた頬を緩めた。