I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
帰り道、背中ごしに椿木さんが「……タカちゃんって、結構タラシなとこあるよね。それ天然?」と声をかけてきた。
「…え、そんなつもりないんだけど。」
まさか自分が女タラシだと、そんな事を言われる日が来るとは思ってなくて俺は驚く。
「例えばどの辺?」
「……えー……何てことない顔して可愛いとかすぐ言うし、頭撫でたりとか抱きしめたりとか、お、おでこにキスとか…そういうの平気で出来ちゃうし……と、とにかく!思わせぶりっていうか、女の子が好きになりかけるようなことサラッとしすぎ!」
チラリと背後を見やれば、言葉を紡いでいくほどに顔を赤らめていく椿木さんが見えた。
日頃の俺の行動に抗議しているかのようなその姿に俺はクツクツと喉をならす。
そうすれば椿木さんは「…ちょっとタカちゃん!今笑うところじゃない!」と更に頬を膨らませる。
「ハハッ、それはさ、” 椿木さんだから ” だろ。」
「……え?今何て?」
「椿木さんだからインパルスにも乗せるし、雨だろうが毎日迎えに行きてぇと思うんだよ。椿木さんだから、どんな姿でも可愛いと思うし、触れたいと思うし、どんな時だって、出来れば俺の目の届くところにいてほしい。」
「…え、タカちゃん、それってどういう…。」
「ん?わかんねぇ?」
心なしか高鳴る鼓動を感じながら、
まぁ椿木さんの事だから、こんな遠回しな言葉じゃ俺の気持ちなんて伝わらないだろうな、なんて苦笑する。
「………で?今の話は、椿木さんもちょっとは俺のこと好きになりかけてくれてるって話?」
「……え!?…な、なんでそうなるの!タカちゃんのバカ!意地悪!…もう、ほんとそういうところ!」
「ハハッ、なんだよそういう話じゃねぇの?残念だなー。」
「…もう、そのうち後ろから刺されても知らないからね!」
俺が悪戯に笑えば、ポカポカと俺の背を叩く椿木さん。
早く逢いたいと思うのも、こんなにも触れたいと思うのも君だけなんて。君のどの瞬間だって見逃したくないんだなんて。
今すぐにでもこの溢れんばかりの想いを伝えて、後ろの小さな彼女をどこか遠くへ攫ってしまおうか。
” 椿木さんが好きだ "
何故かその言葉だけが今日も言えないまま
2人の間を通り過ぎた。