I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
部活が終わった頃、『今日は凛子ちゃん、うちで預かるから迎えよろしく』と柚葉からメールが届いた。
エマが自分の姉のように椿木さんのことを慕っているのは知っていたが、知らないうちに柚葉とも仲良くなっていたのかと少し驚く。
大方、八戒から”タカちゃんの好きな子”とか何とか聞いた柚葉が気になって椿木さんに声をかけたといったとこだろ。
俺は椿木さんのメアドを選択すると『柚葉達といるんだって?帰る頃、迎え行くから連絡してな。』とメールを送った。
そうすれば、『わかった、いつもありがとう。』とすぐに返信が来て俺は頬を緩める。
それから暫くして20:00を回る頃、不意に着信音が鳴り響く。
通話ボタンを押せば、例の如く騒がしい八戒の声が耳に響いた。
「おー、八戒。今お前ん家に椿木さんいる?」
『いるいる!なんかめっちゃギャルになった凛子ちゃんがいる!!!』
「は?ギャル?」
『うん!!とにかく早く来てよ、タカちゃん!!』
「ハハッ、よくわかんねーけど、今から行くわ。椿木さんにも伝えといて。」
俺は、「凛子ちゃんのとこ行くの?」と聞いてきたルナに、椿木さんも家に連れてくるから、2人で大人しく待ってるようにと伝える。
そして、2人の「わーい!」「凛子ちゃん♡」と喜ぶ声を背中で聞きながら、インパルスの鍵を手に家を後にした。
「タカちゃん!」
八戒と柚葉の住む豪邸の脇にインパルスを止めれば、入口から八戒が嬉しそうに走ってくる。
『お前は、犬か。』なんて、心の中で一人ツッコミをいれる。
「柚葉ー!タカちゃん来たよー!」
後ろを振り向いて大声で八戒が叫ぶと、ひょこっと玄関のドアから柚葉が顔を出した。
「おー、三ツ谷。ちょっとそこで待ってな。」
そして、そう言うと再び家の中へと戻る。
「何かすげぇんだよ!凛子ちゃんは凛子ちゃんなんだけど、雰囲気が全然違くてさ。帰ってきた時、『え、誰?』ってなった。」
聞くところ、柚葉とエマによって変身させられたらしい椿木さんについて、少し興奮気味に話す八戒。
ギャルっぽい椿木さんって、何か想像つかねぇな、なんて思いながら、俺は椿木さんの登場を待った。