I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
凛子が病院に向かっていれば不意に響いた着信音。
着信元は先日仲良くなった八戒の姉の柚葉で、「今日うちで女子会しよう。エマも来るって。」という誘いの電話だった。
そんなひょんな誘いから、凛子は病院に顔を出した後で柚葉の住む柴家で他愛もない話を繰り広げていた。
勿論、凛子は、2人から『最近三ツ谷とどうなの』だとか『早く告っちゃえば?』だとか、想い人との進展などについての質問責めを受けることとなる。
そんなこんなしていれば、柚葉が凛子のことを頭のてっぺんからつま先までじーーーっと見渡して口を開く。
「…ずっと思ってたんだけど、凛子ちゃん、なんでそんなダッサイ恰好してんの?スカート長ぇし、ルーズも履いてないし、化粧もしてないし、何か勿体ない。顔もスタイルもいいのに。」
凛子の顔を不思議そうに眺める柚葉。
「わかる!ウチも実はずっと思ってた!凛子ちゃんって絶対もっと可愛くなると思う。」
そして、それに続いてエマも首を縦にぶんぶんとふる。
「…んー、あんまりファッション雑誌とか読まないから、オシャレとかって詳しくなくて。」
2人の言葉に凛子が困ったようにへへっと笑えば、柚葉とエマは楽しいことを思いついたように、キラキラと瞳を輝かせ始めた。
「よし、アタシらに任せな!」
「題して、凛子ちゃんプロデュース大作戦!やっぱ女の子に生まれたなら、目一杯オシャレ楽しまなきゃ損だよ!」
「え、プロデュース?!」
「よっし、じゃあー、まずスカートは3回くらい折って、スカーフも外しちゃお!」
「ルーズはアタシの特別に一つ貸してあげる。紺ソの上から履けばいいよ。」
目の前のキラキラ女子の勢いに流されるまま、見る見るうちに気崩されていく制服。
「うーん、スカートの折り目見えちゃうのはちょっとダサいから、カーデ巻きたいなぁ。柚葉ちゃん、予備のカーデとかある?」
「あるある!ちょっと待ってな。ついでにメイクポーチも持ってくる。」
柚葉が二階にカーディガンやメイクポーチやら諸々を取りに行ってから30分弱が経った頃、
「…え、凄い、別人みたい……!」
姿見の前で目を大きく瞬かせる凛子がいた。