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I don’t want to miss a thing.

第1章 …I'll be there for you.



「………ごめんなさい、気持ちは嬉しいけど……その、先輩のことよく知らないし、お付き合いとかそういうの出来ないです。ごめんなさい。」

椿木さんが申し訳なさそうに「それじゃあ」と去ろうとすれば、男は何を思ったのか椿木さんの肩を掴む。

「ちょっと待ってよ。まだ話終わってねぇじゃん♪」

「………は?」

そう言うと男はニヤリと気色悪い笑みを浮かべて、椿木さんの肩を抱いた。

「…ちょっと!離して!」

椿木さんは心底怪訝そうに眉をしかめ、男の腕を振り払おうとする。

「そんな固くなんないでさー、別にお互いのことなんてこれから知っていけばよくね?……それとも、三ツ谷とかいう2年坊とデキてるって噂がマジな話だったりすんの?」

「……は?タカちゃん?」

「………ふーん、あながち間違いでもないって顔してんね。でも、三ツ谷って東京卍會入ってるっつったって所詮手芸部の坊ちゃんだろ?考え直してみなよ、そんな半端な野郎より、俺らと一緒にいた方が絶対楽しいって!」

そろそろ我慢が出来なくなった俺は、もたれかかっていた柱から背を離す。

そんな俺の様子に気付くことのない男は、

「………それに、俺、三ツ谷より気持ちよくさせてやれる自信あるよ?」

と、椿木さんの耳元で下品な笑みを浮かべると、椿木さんの肩に置いていた手を椿木さんの腰へとゆっくりと這わせた。

「………あの野郎ッ…黙って聞いてれば!」

俺が足を一歩前に踏み出せば、不意にバシンッと重い音が鳴り響いて、男は前のめりに勢いよく倒れ込む。

想定外の出来事に俺は大きく目を見張る。

突然くるりと素早いスピードで回転した椿木さんの長い脚が、男の首を後ろから思い切り蹴り飛ばしたのだ。

「…?!?!」

「…………え。」

俺と男が一瞬の出来事に呆けに取られていれば、
「…………うーーん?」と不思議そうに首を傾げた椿木さん。

「…………先輩、言葉の使い方間違ってますね?だって、私が知ってる三ツ谷隆っていう手芸部所属の男の子は、私がこれまでの人生で出逢った人の中でも、あんなイイ男、他にいる?って思う位には最高にかっこいい男の子なんですよ。」

そして、そこまで述べると、椿木さんは、いつもの花が咲いたような笑顔でふわりと笑った。
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