I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
「あれ、椿木さんのクラス、席替えしたのかよ?イイネ!」
「ちょっとちょっと、ぺーくん冗談よしてよ。私一番前だよ?全然イイネ!じゃないって!」
下校時刻の鐘が鳴り響くと、ひょこっと、ぺーやんが廊下から顔を出す。
ぺーやんが教室に入ってきたことで、椿木さんの隣の奴はビクッと肩を揺らして、「椿木さん、また明日」と言って教室の外へと姿を消した。
ぺーやんの無意識のファインプレーに俺は陰ながら賞賛を送り、楽しそうに会話している2人の元へと向かう。
「でよー、ぱーちんがその犬につけた名前がポチだぜ。パーちん、マジでセンスなさすぎだと思わねぇ?!」
「あはは!そんなオシャレなワンちゃんなのにポチなんだ!!!ぱーくんっぽくて何かイイネ!」
「いや、全然イイネ!じゃねぇって。ドラケンには懐いてんのに俺には全然懐かねーしよー。」
「ハハッ。お前ら、パーがこないだ飼ったってゆうアフガンハウンドの話してんの?」
俺が顔を出せば、椿木さんが「あ、タカちゃん!」と言ってニコリと笑った。
「オウ、三ツ谷。椿木さんと離れちまって寂しそうだな!」
ペーやんはと言えば、俺を見るとすぐに、ニヤリと楽しそうな表情を浮かべた。
俺はそんなぺーやんに「うっせぇボケ」と笑って返し、「もう、ぺーくんは何でそう言うことばっか言うかな!」とぺーの腕のあたりをポカポカと殴っている椿木さんを見て頬を緩めた。
同じ空間でこうやって他愛もない話をするだけで、ほぐされていく心。
「…ハハッ、だせぇな俺。」
そして、俺も大概単純なヤツだなと自分自身に苦笑した。