I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
7月に入り少し蒸し暑くなってきたこの頃、
担任の気まぐれにより突如席替えが行われた。
もう少しで夏休みになるというこの時期に何故、と思いつつくじを引く。
四つに折りたたまれた白紙を開くと、真ん中の席の一番後ろを指す15という数字が記載されていた。
今年はまぁ中々くじ運が良いらしい。
「椿木さん、次どこ?」
俺の後に続いてくじを引いた椿木さんに声をかければ、1と書かれた白い紙を見せられる。
「…なんと、廊下側の一番前。タカちゃんは?」
「ん?俺は真ん中の一番後ろ。離れちまったな。」
内心残念に思いながらそう笑えば、椿木さんは「えぇ、タカちゃんまた一番後ろなの?!いいなー!」と口をとがらせて不満を漏らした。
拗ねる姿も可愛いな、なんて思いながら、新しい席に机椅子を移動すれば、廊下側の一番前に移動した椿木さんが隣の席になった奴と何やら楽しそうに会話をしている様子が目に入った。
俺は机に頬杖をつきながら、そんな2人の様子を暫くぼーっと眺める。
面白くねぇ、なんて思ってしまう俺は心が狭いのだろうか。
そんなことを考えながら悶々としていれば、視線に気が付いたのか椿木さんがこちらを向いて少し照れたようにふわりと笑った。
はぁ、椿木さんのこういうとこ、ずるいよなぁ
俺は人知れず心の中でため息をつきながら、机の中から教科書を取り出した。
結局、その日は、
教科書を忘れた隣の奴に頼まれて机をつけて2人仲良く教科書を眺めている様子であったり、
ノートを取る際に、椿木さんの左腕がぶつかれば、「ごめん」と頬を染めながら小声で謝罪の言葉を口にする椿木さんの姿であったり、
隣同士になった2人の仲良さそうな姿が度々視界に飛び込んでくることとなり、俺は終始、悶々とした気分を抱えながら学校生活を過ごすこととなった。