I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
「そういや三ツ谷ってさ、凛子ちゃんのこと好きなのになんで告んねぇの?」
とある休日、マイキーに呼び出されたファミレス。
最近傘下に加えた新勢力の件で話し込んでいれば、全然話変わるけど、と口を開いたマイキー。
「ハハッ、なんだよ藪から棒に。」
「あーそれ俺も思ってた。」
突然の話題転換に驚いて笑えば、ドラケンの声を皮切りに、お馴染みのメンツが口を揃えて同意する。
「三ツ谷くんって案外、奥手なんスか?狙った獲物は虎視眈々と逃さないイメージあるんスけど。」
「オイ、千冬。コシタンタンってどういう意味だよ?」
「まぁー俺はちょっとわかるぜ。椿木さん、可愛くてスタイルも良いし、ちょっと高値の鼻感あるよなー。」
「それ言うなら高嶺の花だろ。パーちんの脳みそ、マジスポンジ!」
東卍の馬鹿代表2人と補佐役2人の会話に笑いながら、俺は「んー…」と暫し頭を捻る。
「考えてねぇわけじゃねぇけど、まだ時期じゃねぇかなって思って。」
椿木さんの周りの連中の中で、自分が幾分か特別な存在として認められているだろうとは自負している。
しかし、彼女が自分と同じ気持ちを抱いているかと言われれば、少し自信がない。
先日の夜、愛おしいと想う気持ちが溢れてしまった結果の苦し紛れの額へのキス。
単なる仲の良い男友達ではなくて、一人の” 男 ”として意識してもらいたいと期待を込めたキス。
唇が触れた瞬間の、椿木さんの大きく見開かれた瞳とりんごのように真っ赤に染まった顔……。
椿木さんがあの日の出来事について触れてくることはなかったが、その時の椿木さんの様子と最近の椿木さんの言動のいくつかを鑑みれば、作戦は概ね成功したものだと信じたい。
『…なんか、最近いつもより距離遠くねぇ?俺、何かした?』
『…え?!…そ、そう?…そんなことないと思う、けど。』
『……ふーん。じゃあ俺がもう少し近づいても問題ないよな?』
『へ?!なになになに、ど、どうしたの、タカちゃん!?』
『…ん?睫毛取ってやろうと思って。ホラ。』
『……あー睫毛…睫毛ね!ありがとう、タカちゃん!』
昨日、夕飯を一緒に作っていた際の出来事。
悪戯にからかえば、真っ赤な顔で大きな瞳を瞬かせた椿木さんを思い出し、俺は頬を緩めた。