I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
ウォンウォンッ
久しぶりに集会に呼ばれて顔を出した帰り、見知った後ろ姿をみかけた。
なんてったって、俺は正面より後ろ姿の方が見慣れている。間違いないはずだ。
「…八戒、悪ぃ。俺、用事思い出したから先帰ってろよ。」
少し不服そうな八戒を適当に交わして別れを告げると、俺は、彼女の歩く歩道の横にバイクをつけた。
「…椿木さんだよな?」
声をかければ、驚いた顔をした椿木さんがこちらを向いた。
「え、三ツ谷くん?」
「はは、やっぱ椿木さんか。つーか、こんな遅い時間に女の子一人で何やってんだよ。危ねーだろ。」
「はは、流石お兄ちゃんは優しいね。…実はお母さん、あそこに入院してて。お見舞いしてきて今帰るとこなの。」
椿木さんは、背後の総合病院と書かれた無機質な建物を指さすと、いつものようにニコッと笑った。
「…そっか。立ち話もなんだし、家まで送ってくから後ろ乗んなよ。」
なんだか放っておけなくて、愛機の後ろを叩いた。
「いやいや、私いつも歩いて帰ってるし平気だよ!可愛い妹ちゃんたちがお腹空かせて待ってるだろうし、私のことは気にせず早く帰ってあげて!」
「いや、あいつらにはもう飯も食べさせて風呂もいれてきたから大丈夫。…ほら、遠慮しないでここ乗れよ。」
小さな手のひらをブンブンと身体の前でふって、中々こちらに来ない椿木さんを催促すれば、しばらくして、うぅとか何とか言いながらも諦めたのか、椿木さんは俺の後ろに恐る恐る跨った。
「…私、バイク乗るの初めて。」
椿木さんに俺のメットを被せていれば、少し緊張した面持ちの顔が覗いていた。
「ん、椿木さんのこと乗せるからにはもちろん安全運転で帰るし安心しろよ。まぁでも落ちねぇように、ここ、しっかりつかまっててな。」
「…うん。」
自分の腰紐を椿木さんの手に握らせたことを確認して、バイクを走らせる。