I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
三ツ谷が、妹2人を凛子の家に「いつも悪ぃな。」と預けて行ってから約4時間が経過しようとしていた。
キッチンには、エプロンを身に着けて、オーブンと真剣な表情でにらめっこしている凛子の姿が。
「凛子ちゃーん、こっちの準備は大体になったけど、ケーキどお?いい感じ?」
朝から手伝いに来ていたエマが、部屋の飾りつけのキリがついたことにより、キッチンにひょこっと顔を出す。
「…うーーん、お菓子ってレシピ通りに作っても、出来上がるまではめちゃくちゃ緊張するね。」
それは好きな人のために作ってるお菓子だからでしょ、なんて言葉を飲み込み、エマは真剣な凛子を微笑ましく見つめる。
「凛子ちゃん、心配性すぎ!料理だって、こんなに美味しそうに出来てるんだし、スポンジだって余裕だよ♡うわ、見てたらお腹空いてきた…。」
テーブルに並べられた料理の数々に素直に感心するエマ。
一方、凛子は、オーブンで焼いているシフォン生地を気にしながらも、今度はアーモンドクリームを絞り込んだタルト生地に綺麗にフルーツを盛り付けているところだった。
「凛子ちゃん、それ1個味見してもいい?」
「マナも!マナも!」
エマと共に部屋の飾りつけを手伝ってくれていたルナマナがフルーツにつられて、わらわらと凛子の足元に寄ってくる。
「おっけー!じゃあね~、頑張ってくれた良い子2人には特別に、イチゴとマスカットをあげちゃう!!!」
「やったー♡凛子ちゃん、ありがとう♡」
「ありがとう、凛子ちゃん♡」
凛子からフルーツを口にいれてもらえば、上機嫌でリビングへと戻る2人。
「てか、ケーキ2つ同時に作ってんのもまじで凄いと思うけど、料理も昨日から仕込んでたんでしょ?凛子ちゃんってひょっとして凄い料理上手???」
そんなちびっ子2人を見つめながら、エマが凛子に話しかければ、凛子は目線こそ合わせないものの、嬉しそうに微笑んだ。
「…んー…まだまだ勉強中だけど、タカちゃんとかルナちゃんマナちゃんが喜んでくれんの見ると、お料理も段々楽しくなってきたっていうか…。まぁ今日は特別な日だし、マイキー君達も遊びにくるっていうから、ちょっと頑張っちゃった!」