I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
公園までの道も、公園に足を踏み入れてからも、もう少しで梅雨入りということもあって、湿気を帯びた生暖かい空気で満たされていた。
誰もいない夜の公園に2人、ブランコに隣り合わせで座る。
しばらく、お互い何を話すでもなく、月明かりを見ながら、心地よい穏やかな時が過ぎていくのを感じていれば、肩にふわりと温かい何かが触れるのを感じる。
「やっぱ夜はまだちょっと冷えんな。これ羽織っとけよ。」
頭上からタカちゃんの声がして後ろを向けば、いつの間にか私の後ろに来ていたタカちゃん。
どうやら、タカちゃんの着ていたパーカーを私の肩にかけてくれたらしい。
「…へへっ、いつもありがとね。…ねぇ、タカちゃん。タカちゃんって実はかなりモテるでしょ?」
「は?何だよ、急に。」
タカちゃんの変わらぬ優しさにそんな事をふと尋ねれば、タカちゃんは頬をぽりぽりと掻きながら、再び隣のブランコに跨った。
タカちゃんは無意識なんだろうけど、タカちゃんが頬をかくのは照れてるサイン。
やっぱりタカちゃんのこと狙ってる子ってきっと沢山いるんだろうな、なんて少し胸がチクりと痛んだ。
「…んー?女の勘ってやつ?タカちゃんって、ジェントルマンだから。」
小さな痛みを誤魔化すように笑えば、タカちゃんは「ハハッ、何だよそれ」なんて笑った。
「…そう言えば、今日は八戒くんとお買い物行くんだったよね?ルナちゃんとマナちゃんのことよろしくって、さっきメール来た。」
そんなタカちゃんを横目に、私は小さな嘘をつく。
お料理やケーキ、部屋の飾りなど諸々をサプライズにしたくて、実は前々から、当日は夕方までタカちゃんを外に連れ出すように八戒くんにお願いしていたのだ。
お祝いの言葉は誰よりも早く伝えたくて、サプライズではなくなってしまったけど。
「ハハッ、まじで?アイツ、対面でそれ言えるようになりゃいいのにな。ほんと変な奴。」
そんな私の小さな嘘に気付くわけもなく、楽しそうに笑うタカちゃんを見ては、明日の夜が楽しみだなと思う。
「…喜んでくれるといいな。」
「え?今何か言った?」
「ううん、こっちの話!」
それから私たちは他愛もない話に花を咲かせ、いつも通り穏やかな時を過ごした。
あぁ、どうかこの幸せがいつまでも続きますように。
一人密かに、夜空で輝く星たちに小さな願い事を託した。