I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
溢れる思考を止めるようにアルバムを閉じて、少し遅れて届いた八戒くんからのメールを受けて用意したプレゼント達と一緒にまとめる。
オシャレなタカちゃんに気に入ってもらえるだろうか?
そんな少しの不安と期待から、一度落ち着いた心臓は別の意味で再度トクントクンッと脈を打ち出した。
ふと時計を見遣れば、00時を少し過ぎた頃。
少し悩んだあとで携帯を手に取り、「お誕生日おめでとう」とシンプルな一文をタカちゃん宛てに送信した。
そうすればすぐに、着信音が鳴り響いて、携帯の画面には『タカちゃん』の5文字。
色々と考えたあとだからか何か変だな、少し緊張するな、なんて思いながら通話ボタンを押せば、「椿木さん、今、ちょっとベランダ出て来れる?」なんて、少し低いタカちゃんの声が耳に響いた。
「え?ベランダ?」
そんな突然の言葉に驚きつつ、ベランダに出れば、「そのまま下向いてみて」とタカちゃんが続ける。
「…え?タカちゃん?何でそんなとこいるの?」
タカちゃんの言うまま下を見れば、私のマンションの下、携帯片手にこちらを見上げてニカッと笑うタカちゃんがいた。
「ハハッ、何でだろな。椿木さんから誕生日メール貰えて、少し浮かれてんのかも。ちょっと夜の散歩でもしねぇ?」
「…う、うん!!!今行くからちょっと待ってて!」
逸る気持ちを必死に抑えながら、玄関まで駆けていけば、電話越しに、「ハハッ、慌ててコケんなよ。」と明るいタカちゃんの声が聴こえた。
エレベーターを降りながら、背面に設置された鏡を見て、髪の毛を整えていれば、あっという間に、1Fに辿り着いた。
「おう、こんな夜中にごめんな。」
マンションの外に出れば、壁にもたれて笑うタカちゃんがいて、その笑顔にまたトクンッと胸が高鳴る。
「ううん、全然!…お誕生日おめでとう、タカちゃん。」
何だか恥ずかしくて少し俯きがちにそう言えば、タカちゃんは、嬉しそうに笑いながら、私の頭を撫でる。
「おう、ありがとな。ってか、俺、誕生日なんか椿木さんに言ったことあったっけ?メール貰うまで、すっかり忘れてたわ。」
「…この間、エマちゃんと遊んだ時に教えてくれて。」
「へぇ、なるほどね。あいつもよく知ってんなぁ~。」
そう言っては、公園でも行くか、なんて歩き出したタカちゃんに私も続く。