I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
バイクの後ろに乗せてもらったり
ご飯を一緒に食べて美味しいねって笑い合ったり
タカちゃんとルナちゃんマナちゃんと夕方まで遊んだり…
今ではすっかり日常となってしまったことが、もう出来なくなるの?
少し癖のあるあの甘い香り
頼もしい大きな背中
『椿木さん』と呼ぶ少し低めの優しい声
ニカッと眩しい笑顔で笑う顔
目尻を下げて優しく微笑む顔
頭を撫でる身長の割に大きくて骨ばった手
全部全部、側で感じることを許されなくなってしまうの?
今まで自分がいたところに別の誰かがいて、私の代わりにタカちゃんと幸せそうに笑っている、そんな光景を想像すれば、胸がギュウッと誰かに掴まれたかのように酷く痛んだ。
「…………そんなの、やだなぁ。」
ぽつりと零れ堕ちた言葉が、私しかいない家に寂しく響く。
好きとか、愛してるとか、そういうのって自分にはまだまだ縁のない世界だと思っていた。
これまで誰かのことを好きだなんて思ったことなんてなかったし、恋愛感情と家族に対する愛情の違いも正直今もわからないままだし。
何より、家族がいなくなってしまったこの世界で、私だけがそんなに幸せに生きていっていいのか、よくわからなかった。
だから、そういう浮ついた感情には、知らないうちに蓋をしてしまっていた、のかもしれない。
でも、そんな中でも感じる確かなことは、
タカちゃんを知らなかった頃には、きっともう戻れないということ。
これから先も、タカちゃんの側にいたいし、
彼の温かい心に触れていたい。
どうか私の知らないどこか遠くに行かないでほしい。
でも、あんなに素敵なタカちゃんには、どうか幸せになってほしいし、いつも笑顔でいてほしい。
ただ、もしも、タカちゃんの隣で彼を一番幸せな気持ちにしてあげられる人が自分であるならば、それは、なんて幸せなことなのだろう。
いざ、蓋を開けてみれば、タカちゃんに対して複雑な色んな想いが溢れてきた。
とめどなく、とめどなく、沢山の想いが。
人は、この身勝手な想いの丈を、” 恋 ” と呼ぶのだろうか?
そして、相手を無条件に大切に思うこの気持ちを ” 愛 ” と呼ぶのだろうか?
このもどかしい気持ちを定義するには、私はまだまだ未熟で幼いけれども、今感じている想い一つ一つに偽りはない、これは間違えようのない真実だった。