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I don’t want to miss a thing.

第1章 …I'll be there for you.



思っていたよりも作業が捗り、時間を持て余していた。

上の音楽室からは先ほどから変わらず綺麗なメロディーが聞こえてくる。

たまに有名な曲も弾いてくれるので、聞いていて飽きない。

しかし中々選曲のセンスがよくて、俺の知っている音楽教師が好みそうな感じではなく、どちらかというと若者っぽいセレクトであることに無意識のうちに気が付いた。

…となると、生徒の誰かが弾いてるのか?

そんな少しの好奇心から、授業開始までまだ15分ほどあるが、俺は部室を後にして音楽室へと向かった。

演奏の邪魔をしないよう入り口のドアの小窓から中を覗けば、そこには驚いたことに椿木さんがいた。

こちらに気付くことなく演奏を続ける椿木さんの瞳は、心なしかいつもより数段キラキラと輝いているように見えた。

暫く外で覗いていれば、一曲終わったようなので、扉を引いて中に顔を出す。

「…椿木さん、いつも急いでどこ行ってんだろって思ってたけど、ここでピアノ弾いてたのか。めっちゃ上手ぇな。」

「え!!!……み、三ツ谷くん?!いつからそこに……ひょっとしてずっと曲終わるの待ってたの?」

そうすれば、椿木さんはバッと立ち上がってこちらを驚いた顔で見つめたかと思えば、たちまち茹でタコのように顔を赤く染めて、恥ずかしいのか申し訳なくでも思っているのかバツの悪そうな顔をした。

「いや、ついさっき来たとこ。部室で作業してたらピアノの音が聞こえてきたから誰が弾いてんのか気になって早めにこっち来てみたってわけ。」

「…そうだったんだ。ごめん、うるさかった?」

椿木さんは、申し訳なさそうに眉を八の字に寄せて、こちらをうかがう。

「全然。むしろ、選曲センスいいから聴いてて飽きなかったよ。…でも、びっくりしたわ。椿木さん、こんな特技あったんだな。」

そう言って笑えば、椿木さんは少し安心したのか、ふにゃりと柔らかな顔をして、ありがとうと言った。

端正な顔のせいか普段はキリッとして見える彼女の柔らかい表情に、少しだけ心臓が高鳴ったことには知らないふりをしておく。

「昼休みはいつもここ?」

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