I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
「…あ?なんだお前、嫁いたの?」
八戒の茶化す声を適当に受け流しつつ、椿木さんから届いたメールに添付されていた写真を保存していれば、後ろからヌッとドラケンが顔を出した。
「あ?三ツ谷の女だぁ?」
「え、場地さん、三ツ谷くんって女いたんすか?!」
「ねぇねぇ、ケンチン、たい焼き無くなっちゃったー。」
そして後を追いかけるように隊長、副隊長メンバーがこちらにやってくる。
「…オイ、八戒。お前が騒いでっから、うるせぇ奴らが来ちまったじゃねぇか。」
「えー、嘘、俺のせい?タカちゃんがニヤニヤしてっからでしょ!」
その状況にため息をついて、八戒のことを軽く睨めば、八戒は全く悪びれた様子もなくケロッとしている。
「…で?三ツ谷の嫁ってどんな感じなの、俺らにも見せろよ。」
「俺、知ってるぜー。俺ぁ、馬鹿だけどよー、三ツ谷が惚れてることくらい見てればわかる。」
「オイ、パー!てめー適当なこと言ってんじゃねぇぞ!」
「パーちんの脳ミソでわかるんだから、ミジンコでもわかる事実だぞコラ」
「……よっと。」
「あ?!おいこら、マイキー!」
あっという間に幹部連中に囲まれると、後ろからひょっこりと現れたマイキーに携帯を奪われ、俺は頭を抱える。
「へー、この子?結構、可愛いじゃん。」
そんなマイキーの声にどれどれとマイキーの周りに群がる東卍の連中。
「お?ちょっと猫っぽいツラした奴じゃねーか。」
「うわー、三ツ谷くん、こんな美人隠してたのかよ、ずりーな!」
「へー、お前の妹の面倒見てやってんだ。いい子だな。」
人の写真フォルダやメールの履歴を見て、すっかり興奮気味な奴らに、俺は、はぁーと長い溜息をついた。
「ほら、お前ら。もう気ぃ済んだだろ。そろそろ携帯返せよ。それと、椿木さんは家が近いってだけで彼女とかじゃねぇよ。」
「え?そうなの?毎日、凛子ちゃんのこと、わざわざ迎えに行ってんのに?!」
人の携帯片手に賑わう東卍の面々の誤解を解くべく、そう述べるも、八戒からの思わぬ暴露で、俺の努力は泡と化した。
「え、まじで?三ツ谷、溺愛かよ!」
「だから言ってんじゃん、三ツ谷がベタ惚れだって。」
「あー俺もタカちゃんに溺愛されたい。」
「…………お前、後で覚えてろよ、八戒。」
俺はこの後、散々茶化されることになる。