I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
「はー、しんど。」
最近、渋谷まで幅を利かせてきているチームを牽制するために、今日は久々の抗争。
結果は東卍の圧勝に終わるも、相手チームの人数が多かったこともあり、疲労が襲う。
負傷しているメンバーを見送り、バイクへもたれかかり一息つく。
周りを見渡せば、マイキー、ドラケンに始まり、幹部メンバーが集まって談笑していた。
「ははっ、うちの奴らもタフだなー。」
そんなことを一人呟けば、奥で負傷したメンバーの面倒を任せていた八戒が姿を現した。
「おータカちゃん、あっちも片付いたぜ。」
「おう、八戒。ありがとな。」
八戒に感謝を述べ、俺はポケットから携帯を取り出す。
待ち受け画面には新着メールが一件と表示されていた。
「何々、凛子ちゃんからメール?」
「オイ、人の携帯、横から覗くんじゃねぇよ。」
メールを開いたところで、横から、ニヤリと悪い笑みを浮かべた八戒が顔を出す。
「えー、いいじゃん。見られて恥ずかしいことでも書いてあんの?」
「…バカヤロー。んなわけあるか。」
ったく、その調子で椿木さん本人の前でも話してやれってんだ。
俺は、悪ノリし出した八戒に悪態をつきながら、メールの中身を確認する。
from 椿木さん
sub
===========
うちの冷蔵庫の野菜が悪くなりそうだったので、
今日はうちでルナちゃんマナちゃん預かってます。
2人ともお風呂入って、私の部屋ですやすや眠ってます。
今日は2人のリクエストの元、ビーフシチューとポテトサラダを初めて作りました!
気を付けて帰ってきてね。
P.S. ルナマナコンビが書いてくれた絵が可愛すぎる!
===========
届いたメールを更にスクロールすれば、複数枚、写真が添付されている事に気付き、俺は頬を緩めた。
一つ目に登場したのは、夕飯を美味そうに頬張るルナとマナの写真。
次は、椿木さんの物と思われるベッドの上で幸せそう眠るルナとマナの写真。
それから最後に、俺と椿木さんとルナマナが仲良く手を繋いでいる様子を描いたまだ下手くそな絵を撮った写真。
これ全部、嬉しそうに撮ってたんだろうなぁ
なんて、笑顔で写真撮影する椿木さんの姿を思い浮かべれば、不思議と負傷した傷の痛みも癒えていくような気がした。