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I don’t want to miss a thing.

第1章 …I'll be there for you.



「八戒くんって兄妹いるの?」
「………」
「俺らとタメの姉貴と、その上にもう一人兄貴がいるよ。」

凛子が問えば、八戒の代わりに三ツ谷が答える。

「へー末っ子なんだ!」

「あぁ、こいついかにも末っ子って感じだよな。」

笑いながら八戒を小突く三ツ谷。
凛子も「言われてみれば確かに」と言って笑った。

Dannysを出て公園に向かった後も、凛子は「今度、お姉ちゃんとも会ってみたいなー」だとか「八戒くんとタカちゃんはどうして出会ったの?」だとか終始八戒に声をかけ、その度に八戒はフリーズし、代わりに三ツ谷が回答をするという時間が続いた。

「今日はすっごい楽しかったなー、八戒くんの通訳にしちゃってタカちゃんには謝らないといけないけど。」

八戒と別れた帰り道、ルナの手を引く凛子がそう言って笑うと、三ツ谷も今日一日のことを思い出して笑う。

「あいつ、あれで学校生活ちゃんと送れてんのか割と本気で心配になったわ。椿木さんもよくめげずに続けたなー。」

遊び疲れて眠ってしまったマナを抱きながら、三ツ谷が自分よりも少し小さな凛子をチラリと伺えば、凛子はクスクスと口元に手をあてて笑った。

「そりゃあ私にとっては返事が返ってこないことなんて日常茶飯事だからね!」

凛子が寝たきりの母親との会話を思い出し、笑顔でそんなことを言うものだから、三ツ谷はひどく心を痛めた。

そして、凛子のことを「椿木さん。」と呼び止める。

「椿木さんのそういう気丈で凛としてるとこ、すげぇ尊敬してるけど、俺の前では、あんま強がんなよ。」

三ツ谷が真剣な瞳をして凛子を見つめれば、凛子は少し瞳を見開く。
そして眉を下げて「タカちゃんには敵わないなぁ」と困ったように笑う。

「…でも、私が泣いてばかりいても、お母さんもお姉ちゃんもユキも喜ばないと思うから。…それに今はタカちゃんがこうして側にいてくれるから、私は強くいれるんだよ。」

どこか遠くを見つめながら話す凛子は、ここまで言うと「だからね、いつもありがとう、タカちゃん。」と三ツ谷にふわりと笑いかけた。

そんな凛子を見て、三ツ谷は少し照れながら「椿木さんには敵わねぇな」と眉を下げて苦笑した。
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