I don’t want to miss a thing.
第2章 …Please, don't stop the love.
「…ったく、電話繋がらねぇからどこいったかと思えばこんな場所にいたのかよ。」
それから暫くして、背後から降りかかる聞き慣れた愛しい人の声。
振り向いて微笑めば、困ったような顔してこちらに歩み寄ってきたタカちゃん。
「…こんなとこで何してんの、凛子。」
私の切ない表情に気付いたのか、そう言ってはまるで幼子をあやすような優しい顔して私の髪を撫でたタカちゃん。
その感触が心地よくて私は瞳を閉じた。
「……詩織先輩、元気かなと思って。」
私が零したその言葉に暫しの沈黙が流れる。
そして、
「…うまく更生してくれてるといいけどな。…まぁ、不良やってる俺が言えたことじゃねぇけど…。」
そう言うとタカちゃんはハハと苦笑しながら、頬を掻いた。
風の便りで聞いたところによれば、詩織先輩はその後、医療少年院という少し特別な施設に入所することになったそう。
私はタカちゃんの様子を瞳に映すと、過ぎ去りし日の悲しい彼女の面影に想いを馳せた。
とても恵まれたとは言えない家庭環境の中で育ち、誰かに愛されることだけを切に願っていただけの少女。
本当に悲しい時に涙を優しく拭ってくれる…そんな心救ってくれる人に恋焦がれていただけの少女。
きっと私達の住むこの星には、そんな子達が星の数だけ存在しているのだろう。
「……いつか…また…笑って会えるといいね。」
言葉に出来ない遣る瀬無さと切なさを胸に感じながらそう微笑めば、タカちゃんも「…あぁ、そうだな。」と目を細めた。