I don’t want to miss a thing.
第2章 …Please, don't stop the love.
3月中旬になれど、まだ息を吐き出せば白く色づくし、マフラーも手放せない、そんな季節。
それでも、携帯にタカちゃんの文字が光れば、私の心臓は身体中に温かい血を巡らせる。
「もしもし、タカちゃん?そろそろ着きそ?」
『おう、もう着くから外出てろよ。』
電話越しにそんなタカちゃんの声が響けば、自然と頬が緩むのを感じる。
「…じゃあ、お母さん!また明日来るからね!」
急いでカバンを肩にかけ、病室で横たわる母にそう告げれば、私は駆け足でその場を後にした。
今日は待ちに待ったホワイトデー。
久しぶりにタカちゃんと2人きりでデート。
こうも心が弾んでしまうのもそりゃあ致し方なしといったところだろう。なんて。
そんな娘の嬉しそうな姿に、心なしか、母も嬉しそうな顔をしてくれている気がした。
浮きたつ心と緩みきった口元を、なんとか押さえながら病院の外へと足を踏み出せば、こちらに笑顔を向ける愛しい人の姿が目に入る。
「タカちゃん!」
走って駆けよれば、タカちゃんは「お待たせ」と私の髪を優しく撫でた。
そして、「ん。」と言って差し出される手。
私は笑みを一つ溢すと、その大きな手に自身の手を重ねる。
そうすればタカちゃんも満足気に微笑んで、それを上着のポケットの中にしまい込む。
そして、「よし、行くか!」と言って、タカちゃんは眩しい笑顔でニカッと笑った。
行先は原宿。
私達のお決まりのデートコース。
でも、タカちゃんが隣にいてくれるだけで、飽きるなんて言葉とは縁遠いから本当に不思議。
恋人の力って凄い。
そんなことを考えていれば、「なんかいい事、あった?」なんて頭上からタカちゃんの声。
見上げれば、私の大好きなタカちゃんの顔。
「んーん、幸せだなぁって思って。」
そう言って笑顔を向ければ、タカちゃんも幸せそうに目を細める。
「俺も。こんな可愛い彼女がいて、俺、世界一幸せ者かもな。」
タカちゃんのそんな甘い言葉に、私の頬は緩む一方で。
こんな時間がずっと続いてほしいな、なんて心の底から願った。