I don’t want to miss a thing.
第2章 …Please, don't stop the love.
「……なるほど、お返しはクッキーが王道、か。」
日曜の午後、八戒とルナとマナと訪れた公園。
俺は妹2人が八戒と楽しそうにはしゃぎまわっているのを見守りながら公園のブランコにまたがり、一冊の雑誌を読みふけっていた。
「お兄ちゃん、クッキー作るの?ルナも食べたい!」
「マナも!」
「なになに!?タカちゃん、クッキーって急にどうしたの?」
そうすれば、クッキーのワードにやたらと食いついてくる3人。
「おー、もうすぐホワイトデーだろ?凛子に何やったら喜ぶかと思って。」
そう言って、凛子の喜ぶ顔を思い浮かべたら、思わず頬が緩むのを感じた。
「いいなー、凛子ちゃん!タカちゃんからホワイトデー貰えるなんて羨ましい!!!」
八戒がオーバーに悔しがっているのか悲しがっているのか膝をついて床を拳で叩く。
「ハハッ、彼女だかんな。」
俺がそう言って笑えば、今度はルナとマナが
「お兄ちゃん、凛子ちゃんにベタ惚れだもんね!」
「ベタ惚れ!」
なんて言ってニヤニヤと口元を押さえた。
「おう、お前ら。そんな言葉、誰に教わってきたんだ?」
「「柚葉!」」
「ハハッ、柚葉か。あんま悪い遊びは教わんなよな。」
そんな平和なやりとりを繰り返していれば、休日もあっという間に過ぎ去っていく。
俺は、花が綻ぶように笑う凛子の顔を想い出しては、来たるホワイトデーを心待ちにするのだった。