I don’t want to miss a thing.
第2章 …Please, don't stop the love.
結局のところ、俺は凛子の笑顔に弱い。
本当は凛子のチョコが他の奴らに渡るなんて、考えただけでも不愉快。
けど、凛子が頑張って作ったのであろうチョコレートの山と、「みんな喜んでくれるかなぁ…」なんて目を細めて笑う凛子を見れば、仕方ねぇな、なんて思っちまうんだから、困ったモンだ。
俺は頬杖をつきながら、凛子の作業を見守った。
いつもだったら、何かあればすぐ手伝いたくなんのに、コレがアイツらの手元に渡るものだと思うと全くといっていい程やる気が起きないから不思議なモンで。
” 男の嫉妬なんて醜い ” なんて、どっかの誰かさんから聞いたような気もしなくもないが、どうやら俺はまだそんな成熟した男にはなれないらしい。
そんな葛藤を一人抱えていれば、凛子が嬉しそうに口を開く。
「……義理チョコって言ってね、最近流行ってるんだよ。仲の良い友達同士で交換したり、いつもお世話になってる人にあげるんだって。」
何かそういうの素敵だよね
そう言って、ふわりと花が綻ぶように笑って見せた凛子。
きっと凛子は、やっぱ天使か女神かの生まれ変わりなのかもしれない。
博愛主義もそりゃ悪いことじゃない。
でもやっぱり、もっと俺だけを見ててくれりゃいいのに、なんて思っちまうのが男の性というモンで。
そんなことを考えていれば、
「…へえ、なるほどな。」
なんて自分でも驚くほど不愛想な言葉が口から零れ落ちていた。
俺の不貞腐れ具合に気付いたのか、凛子は手を止めると、こちらを向いて、まるで珍しいものでも見るかのように目を瞬かせた。
「……タカちゃん、ひょっとして拗ねてる?」
「…別に拗ねてねぇし。」
「じゃあ何か怒ってる?」
「…怒ってねぇって。」
「……?」
そして、そんな会話のあと、困ったように眉を下げだした凛子。
俺は、そんな愛しの彼女の様子を見遣ると、長い溜息をついて頭を掻いた。
「…悪ィ…凛子のチョコ貰えるのって俺だけかと思ってたから、ちょっと嫉妬してるっつうか…。」
自分で言っておいてなんだか、めっちゃダセェな、俺。なんて。
苦笑しながら凛子に顔を向ければ、凛子は驚いたような顔をした後で、嬉しそうに頬を緩めた。