I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
そんなこんなで、八戒と椿木さんと過ごす初めての休日がやってきた。
椿木さんとはうちで待ち合わせして、八戒とは現地で落ち合う予定になっている。
適当なファミレスで昼飯でも食べて、その後は公園にでも行こうかと考えていれば、訪問者を知らせるチャイムの音が鳴った。
「ルナが出るー!」「マナも!マナも!」
大好きな八戒と椿木さんと遊べると、朝からご機嫌麗しい妹達の後を俺も追う。
「おー、椿木さん、はよ。こいつらの髪結んだら出れるからちょっと上がって待っててよ。」
ドアを開ければ、私服姿の椿木さんが「おはよ!」と笑う。
上がるように伝えれば、履いていたサンダルを脱いでうちに上がった椿木さん。
そう言えば私服姿見るの初めてだな、なんて思いながら、椿木さんの後ろ姿を見つめる。
黒のレースのタイトめなワンピース、綺麗な長い髪の毛は休日仕様なのかゆるい巻き髪になっていた。
椿木さんの家で見たピアノのドレス姿を見た時も思ったが、椿木さんはシックでキレイめな洋服が似合うんだなと改めて思う。
制服姿と違って少し大人びた雰囲気の椿木さんの姿に自然と胸が高鳴るのを感じた。
「凛子ちゃん、ふわふわ、可愛いー!」
「可愛いー!」
そんなことを考えていれば、ルナとマナが椿木さんの綺麗な巻き髪をふわふわと触って瞳を輝かせていた。
俺は嫌な予感に少したじろぐ。
「お兄ちゃん、ルナ、凛子ちゃんとお揃いがいい!」
「マナもお揃い!」
……絶ッ対ェ、そう来ると思った。
「ふふ。タカちゃん、お母さんのコテとかあったりする?今日は私ヘアセット代わるよ?」
お袋のやつあったかな、そんなことを考えていれば、椿木さんがルナの髪の毛を触りながら、こちらを伺う。
「え、まじで?ちょっと探してみるわ。ちょっと待ってて。」
そう言って俺は洗面所へ足を運ぶ。
お袋の使うものをまとめた箱の中をのぞけば、それらしきものが奥の方に隠れているのを見つけて踵を返す。
それを手に居間へと戻れば、マナを膝に抱いた椿木さんが「わ、あった?よかったありがと!」と笑った。