I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
「ねぇねぇ、タカちゃん。」
椿木さんのリクエストにより、今晩のおかずは餃子になった。
ルナマナ含め4人で餃子作りに励んでいると、椿木さんが思い出したように声をあげた。
「ん、どうした?」
不思議に思って椿木さんを見れば、「私、八戒くんと仲良くなる!」と言って、ガッツポーズを決めていた。
俺はその謎の決意に、暫し呆けにとられる。
「だから、今後八戒くんと遊ぶとき、私も呼んでほしい!」
相変わらず瞳をキラキラとさせながら、「ね、お願い!」なんて言いながらこちらを見つめる椿木さん。
「…別にいいけど、急にどうしたよ。」
今日八戒に直接会って八戒に一目惚れでもしたのか?なんて思考を巡らせていれば、椿木さんは
「あんな面白い子、初めて出会ったからさ。何ていうか…私の免疫植え付けたい!というチャレンジ精神?」
といってくすくすと笑った。
「…それに私が知らないタカちゃんの一面を知ってるかもしれないでしょ?そういうのも聞けたら面白いだろうなーと思ったりして。」
俺はそんな風に言って、目を細めて笑う椿木さんの姿を見つめる。
見たところ、惚れただのそういう類から言っているものではないらしい。
それに俺は心なしか少し安堵しながら、可愛がってる後輩と椿木さんが仲良くなってくれるのは、自分にとっても喜ばしいことかと、椿木さんのお願いを快諾することにした。
「そういうことなら、今週末、あいつと遊ぶから、椿木さんも来る?…遊ぶっつっても、ルナマナ連れてどっかで暇潰すだけだけど。」
そうすれば、椿木さんは「行くー!ありがとう!」と言って、ルナとマナと「やったね!また遊べるね!いぇーい!」と言ってハイタッチをしていた。
こういうところ、凄い八戒に似てるなと思う。
そんな楽しそうな3人の様子を俺はぼんやりと眺めながら、
まー、椿木さんが誰かに一目惚れするとか、誰かのことが好きだとか、そういうの、あんま想像付かねーもんな。
こんなに俺と長くいても、そういう気配、全く見せねぇしなぁ。
なんてことを一人で考えては、
複雑な思いを抱えつつ、餃子作りの手を進めた。