I don’t want to miss a thing.
第2章 …Please, don't stop the love.
俺がそう言ってソファを叩けば、凛子は「勿論!ほんと遠慮しないでね!」なんて微笑むと、パタパタとキッチンの方へと戻っていった。
俺が凛子の淹れてくれたココアを口に含んでいれば、カチャカチャと時折、食器類がぶつかる音が静かな家の中に響く。
俺のために作ってくれるチョコレート。
『…タカちゃんって、甘いモノ嫌いじゃないよね?』なんて、
先週あたりに凛子に聞かれてからというものの、俺は密かにこの日を楽しみにしていた。
頻繁に、『…なぁ、俺のために今度は何作ってくれんの?』なんて聞いても、凛子は『えー?内緒♡』なんて笑うばかり。
そのやり取りすら何だか心の底から幸せに感じてたわけだけど、実際に甘い香りを鼻に感じると、俺はより一層淡い期待を抱いて頬を緩めた。
「…楽しみだな。」
甘いココアが俺の少し冷えた身体を温めていけば、俺はキッチンで何やら楽しそうに手を動かしている凛子の横顔を見つめる。
おもむろに携帯を取り出すと、凛子にバレないように、一枚だけカメラのシャッターを切った。
キッチンに立つ凛子の姿を永遠に俺の中に閉じ込めるように。
これまで凛子に言ったことはないけども、
俺は、凛子が台所に立って何か作業しているのを見てるのが、実はすげぇ好きで。
今だって、後ろから抱きしめたくなるのを必死に堪えてる。
どういうわけか知らねぇけど、台所に立つ凛子は特別に可愛く見える。
それに今日という日は、俺のためにそこに立って幸せそうに手を動かしてくれているわけで。
そんなことを考えれば、尚更、凛子のことが愛おしく想えて仕方がなかった。
凛子の本命のチョコレートかぁ、何か俺やっぱすげぇ幸せだな、なんて。
俺は笑みを零す。
暫くして、俺はもう一口だけ甘いココアで喉を潤すと、鼻歌交じりに作業を続ける凛子の姿を瞳に映してから、幸せな気持ちを胸に抱えながらゆっくりと瞳を閉じた。