I don’t want to miss a thing.
第2章 …Please, don't stop the love.
それから暫くして、
「そういう事ならさっきの続きゆっくり描いていいよ、音楽聴いてるし……あ!いいこと思いついた!タカちゃんも一緒に聴こ!イヤホン片耳貸したげる!」
なんて上機嫌に笑った凛子によって、俺の片耳には凛子のイヤホンが装着されていた。
俺のすぐ傍で、ミュージックプレーヤーから流れてくる歌を幸せそうに口ずさむ凛子。
そんな彼女の事を愛おしく思いながら、ペンを走らせていれば、耳に流れてきたのは男性ボーカルの少し甘い声。
「……え。凛子、GLAYとかも聴くの?」
俺が思わず手を止めれば、凛子は「へへっ、意外?」と顔を綻ばせた。
「意外っつーか、俺らよりも少し上の世代ってイメージあるし。」
「あ~、確かにそうだね!…GLAYとかglobeとかって、お姉ちゃんが大好きだったから凛子もよく一緒に聴いてたんだけどさ、改めて聞くと結構いい曲多くて…。最近またよく聴いてるの!」
「…へぇ、なるほどな。俺も今度CD借りてちゃんと聴いてみっかな。」
「お!それならお姉ちゃんの部屋にあるヤツ貸すよ?」
「お、マジで?」
「うんうん!何かタカちゃんってGLAY似合うし!おすすめの曲は『ずっと2人で...』と『春を愛する人』かなー、『HOWEVER』は王道だけど『SOUL LOVE』も良い歌!」
俺はそう言って楽しそうに笑う凛子を見て、頬を緩めた。
程よいテノールの甘い歌声によって紡がれていくラブソングたち。
2人でラブソングを聴いているせいか、今凛子と過ごすこの他愛もない瞬間がひどく尊いモノのように感じる。
暫くそうして、心地のよい胸の温かさに身を預けていれば、視界の片隅にコクンッ…コクンッ…と揺れ出した凛子の頭が見えた。
俺はふっと口元を緩めると、そっと凛子の肩を引き寄せる。
そうすれば、コテンと俺の肩にもたれかかる凛子の小さな身体。
肩に感じる少しの重さと凛子の温もり。
俺は幸せそうに眠る凛子の寝顔を一人静かに見つめたあと、柔らかな髪にそっとキスを落とした。
そして凛子の腕からCameliaと書かれたスケッチブックを引き抜くと、新しいページを開いてペンを走らせた。