I don’t want to miss a thing.
第2章 …Please, don't stop the love.
「……え…なんだ、女の子用のお洋服のデザイン画?……全部すっごい可愛いのに、何でそんな見せたくなかったの?もしかして、タカちゃんでも自信ないとかあるの?」
俺が渋々渡したスケッチブックをぺらぺらと捲った後、面食らった顔でこちらを見つめる凛子。
俺はまだ妙に五月蠅い心臓を落ち着けるように、はぁーっと長い溜息をついた。
「…それ全部、いつか凛子に作ってやりたいと思って去年の夏ごろから書き溜めてるヤツなんだよ。
…四六時中、凛子のこと考えてるみてぇだし。何かちょっとストーカーちっくで気持ち悪ィじゃん。…だから、完成するまでは秘密にしておきたかったんだ。」
俺が頭を掻きながら、そう苦笑すれば、凛子はこちらを見つめて大きく目を見開いた。
そして、視線をスケッチブックの表紙に乱暴に書かれた俺の文字に落とす。
「……表紙のCameliaって文字は?どういう意味?」
「……あー、それはまだ仮の名前なんだけど…将来自分のブランド持つなら、Cameliaってライン作るのもいいなって。……その…レディースラインのミューズは凛子がなってくれたらいいなって、俺、勝手に思っててさ…。だから、ブランド名つけるなら凛子を象徴するようなヤツにしてぇなって思って。」
ちょっとシャネルとモチーフ被るのはまずいかなとか思ったりもすんだけど、俺的に凛子は椿が一番似合うから。
そこまで言えばやっぱり照れくさくて、俺は頬を掻いた。
そうすれば、何度か目を瞬かせた後で凛子は再び、スケッチブックを静かにゆっくりと捲り出す。
俺に覆いかぶさってきた時の勢いはどこへやら、
凛子は何も言わず、ただ静かにスケッチブックの中の色とりどりのデザインに手を滑らせていく。
「………悪ィ、やっぱ、こういうの気持ち悪ぃよな……ひいた?」
凛子の反応が怖くて、静かに顔を覗いてみても、何を感じているのかイマイチ読み取れない大きな瞳が瞬きを繰り返しているだけ。
あー、やらかしたか俺…なんて俺がガシガシと頭を掻いていれば、凛子がゆっくりと顔を上げる。
そして、幸せそうに目を細めてふわりと微笑んだ。