I don’t want to miss a thing.
第2章 …Please, don't stop the love.
居間で手芸に勤しむタカちゃんの代わりに、ルナちゃんとマナちゃんに絵本を読み聞かせていれば、いつの間にか、2人は夢の中。
そんな2人に微笑みを一つこぼすと、3人の寝室の戸を静かに閉めた。
「…どう、イイ感じ?」
居間の入り口に立って、まだ布とにらめっこしているタカちゃんに声をかければ、タカちゃんは時計をチラリと見上げると、こちらを向いて眉を下げる。
「おー、もうこんな時間か。…いつもごめんな、アイツらの面倒見させちまって。お陰で思ってたより作業捗ったわ。」
「アハハ、そんなん気にしなくていいのに。2人と一緒にいると私も癒されるから、むしろありがとうって感じ。」
そう言って微笑めば、タカちゃんも頬を緩める。
「………凛子、おいで。」
今まで手にしていた布をテーブルの上に畳むと、ポンポンと自分の太ももの辺りを叩いたタカちゃん。
「……?」
不思議に思いながらタカちゃんの傍まで近寄っていけば、タカちゃんは私の瞳を下から覗き込むとふわりと笑った。
「…お前、全然遠いよ、凛子。」
「…うん?」
「もっとこっち来てよ。そこじゃ、凛子のこと甘やかせねぇじゃん。」
そして、グイッと腕を引かれると、気が付けばあっという間にタカちゃんの腕の中。
ふわりと鼻を霞めたタカちゃんの甘い香りと、頼もしい胸板の感触に私の胸は高鳴った。
「……ちょっ、タカちゃん……この体勢、ちょっと恥ずかしい……。」
突然体制が崩されてしまったせいで、胡坐をかくタカちゃんの太股に跨るような恰好になっている私。
太股の裏に感じる自分とは違う筋肉質な感触。
視界の片隅に映る制服のスカートから覗く自身の白い肌。
耳に直に感じるタカちゃんの吐息。
それら全てが何だかこそばゆくて、私は、思わずタカちゃんの胸板を押した。
「…ハハッ、顔真っ赤。」
そうすれば、タカちゃんは悪びれた様子もなくクスクスと笑う。
「…ちょっとっ…からかってるなら離れる!」
そう言って立ち上がろうとすれば、キュッと腰に強く巻かれた力強い腕。
「からかってなんかねぇって。……俺、いつだって凛子が全然足んねぇの。」
そうして熱のこもった瞳にジッと見つめられれば、たちまち私は息をすることすら忘れてしまう。
「……すきだよ、凛子。この世の何よりも。」