I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
部活が終わり、丁度家についたところでメールの受信音が鳴り響いた。
送り主を見れば、椿木さんからで、思わず「お、今日は早ぇな。」とつぶやく。
「お兄ちゃん、凛子ちゃんのところ行くのー?ルナも行くー!」
「マナもー!」
それに気が付いたのか、2人で遊んでいたルナマナが俺の足元に寄ってくる。
「お前らは危ないからダーメ。」
「えー、お兄ちゃんばっかり凛子ちゃんと遊んでてずるい!ルナも遊びたい!」
「マナも遊ぶ!」
「ったく、お前らすっかり椿木さんに懐きやがって。………わかったよ、今晩は椿木さん誘ってうちでみんなで飯食おうな。」
ダメと言っても駄々をこねる妹達に根負けして、今日の夕飯に誘うことを決意する。
そうすれば、ルナマナは「わーい!お兄ちゃん大好き!」「大好き!」などと抱き着いてくるので、現金な奴らめと思いながらも頭を撫でてやる。
椿木さんと一緒に飯を食べるのは楽しいし、集会の時とかに代わりにこいつらの面倒を見ててくれるのは正直助かる。
しかし、あんまりルナマナと一緒にいさせすぎて、椿木さんの負担になってもいけないと俺は少し心配もしていた。
いくら優しい椿木さんとは言え、一人の時間も欲しいだろうし…
俺はそんなことを頭の片隅で考えながら、ひっついているルナマナを引きはがすと、
「よし、じゃあ兄ちゃん行ってくっから、お前ら少し大人しく遊んでろよ!」
と言って、インパルスの鍵を手に家を後にした。
そうして、今となってはもう来慣れた道のりを暫く走っていれば、総合病院という文字が目に入って、バイクを脇に止める。
着いたと同時に「三ツ谷くん!」と言って、駆け寄ってくる椿木さんが見えた。
あれ、呼び方戻ってる、なんて内心少し落胆しながらも、「おー、お待たせ」と言ってメットをつけてやる。
「今日もお袋さん変わらず?」
そう聞けば、「うん、気持ちよさそうに今日もよく寝てる。」と言って、椿木さんはインパルスに跨った。
「…そっか。早く目ぇ覚ますといいな!」
この会話ももう何度したのだろうか、椿木さんはいつも変わらずよく寝てる、と笑う。