I don’t want to miss a thing.
第2章 …Please, don't stop the love.
優美ちゃんの家でのお茶会ならぬ近況報告会がお開きになり、タカちゃんに連絡を入れれば、暫くして『着いた』とメールが届いた。
優美ちゃんと親御さん達に別れの挨拶を告げて外に出れば、タカちゃんの銀髪が家の塀から覗いていて、私は思わず頬を緩める。
「タカちゃん、お待たせ!……ってあれ、歩いてきたの?」
「おー、たまには歩いてゆっくり帰んのも悪くねぇかなって思って。」
ん、と差し出された手に手を重ねれば、タカちゃんは「ハハッ」と笑う。
「……え、ごめん、違った?」
そんなタカちゃんの姿に私は何だかとても恥ずかしくなって、思わず手をサッと引っ込める。
そうすれば、タカちゃんは「いや違くねぇんだけど、先にカバン預かろうかなって思って。」と言うと、ふわりと微笑んだ。
「…え?!カバン?!大丈夫だよ、バッグそんな重くないし、いつも持ってるし!」
タカちゃんからの予想外の申し出に面食らっていれば、
「バーカ、そういう事じゃねぇよ。」
なんて、タカちゃんはまた笑う。
「…男って奴は、可愛い彼女の前じゃ少しでもカッコつけてぇ生き物なの。」
「……そう…なの?」
「そうそう、よく覚えといてな。次のテストに出っから、ココ。」
「ハハッ、テストって!……何の教科?」
「…ん?三ツ谷隆の取扱主任者認定試験」
そして、そんな軽口を叩いてニッと笑ってみせたタカちゃん。
クスクスと笑みを零していれば、タカちゃんの手によって、私の左肩にかけられたスクールバッグはあっという間に奪われてしまう。
そして、「ん、」と再度差し出された手。
もう一度手を重ねれば、
「…よしと、帰るか!」
なんて、タカちゃんは満足そうに笑った。
手を繋いで歩く帰り道、横からふわりと香ってきたカレーの匂い。
「…今日の夕飯ってカレー?」
私がそう口を開けば、タカちゃんは「え。」と目を瞬かせる。
「すげぇ、なんでわかんの?」
「だって、タカちゃんから美味しそうなカレーの匂いするもん。」
「マジか、自分じゃ全然気付かなかったわ。」
上着の腕の部分に鼻をくっつけてクンクンと息を吸い込むタカちゃん。
私はそんなタカちゃんの姿を見て、また頬を緩めた。