I don’t want to miss a thing.
第2章 …Please, don't stop the love.
「…これ机の上に置いてあったけど部活で使う奴じゃないかなぁーって思って。」
「おー、ちょうど今探してたとこ。わざわざ悪ィな、助かったわ!」
凛子さんが三ツ谷部長に紙袋を渡せば、ニカッと眩しい笑顔を咲かせた三ツ谷部長。
…いやいや、全然今まで何か探してる気配なんてなかっただろーが。
なんて私は心の中で独り言ちる。
「ううん、全然!帰る時、気付いてよかった!……じゃ、邪魔しちゃ悪いし私行くね。部活、頑張って!」
嬉しそうな三ツ谷部長の姿を確認すると、これまた嬉しそうに頬を緩めた凛子さんが踵を返す。
そうすれば、三ツ谷部長は「凛子、」と言って彼女のことを引き留めた。
「…今日、森田さんと飯食ってくんの?」
「ん?ちょっとお茶して帰ってくるだけ!」
「そっか。じゃあ先に飯作って待ってるわ。帰り連絡してな、迎え行く。」
「ん、わかった。帰る頃、またメールする!」
一瞬不思議そうな顔をした凛子さんは、三ツ谷部長のそんな言葉を聞くと嬉しそうにまたふわりと笑った。
そして、凛子さんは三ツ谷部長と私の方に向けて、小さくヒラヒラと手を振ると今度こそ家庭科室から姿を消した。
……………私は一体何を見せつけられてんだ。なんて。
2人の甘い雰囲気に、月9の甘すぎな展開を見た時のような、ムズムズと胸が痒くなるような感覚を覚えた。
私はだらしなく頬を緩ませた三ツ谷部長がこちらに帰ってくるのを、またジィ~ッと見つめる。
そして、
「……三ツ谷部長、その荷物わざとでしょ?凛子さんが届けてくれると見越して。」
なんて、再び席に戻ってきた三ツ谷部長にジト目で告げれば、三ツ谷部長は「……ハハッ、バレた?」なんて、頭を掻いた。
ハハッ、バレた?じゃねーだろ。
私がそんなことを思いながら、また溜息をつけば、
「…やっぱ少しでも顔見てぇじゃん。」
三ツ谷部長はそう言って照れているのか少し頬を染めた。
「………はぁ……どーもご馳走様でーす。」
私が再びミシンを高速で動かし始めれば、三ツ谷部長も鼻歌なんか歌いながら作業を再開する。
はーあ、私も早く良い人探そ。
なんて、
私は心の中でまた悪態をつくのだった。