I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
森の廃教会での度肝を冷やした大事件から数時間後、俺は自宅の狭い居間に座って、包帯だらけの椿木さんと向き合っていた。
「…ったくよー、どの面下げて、自分の命大切に出来ねぇのにとか言えんだよ。あと一歩間違ってりゃ死んでたかもしんねぇんだぞ?」
「………ごめんなさい。」
「俺に無茶すんなとか言う資格なし。」
「…うぅ……ごめんなさい。」
椿木さんが風呂に入った後、巻かれた包帯を取り換えてやりながら、とくとくと今日の椿木さんの無茶な行動を咎める俺。
「………ほんと、マジで死んじまうかと思って、心臓止まるかと思った。」
はぁ~~~~~~っと長く深い溜息をつけば、
椿木さんはまた、「…うん、ごめんね」と言って眉を下げた。
「……でも、ごめんな。もう少しだけ早く行ってやれてりゃ、こんな目に合わねぇですんだのに。」
綺麗な彼女の手に巻かれた白い包帯をジッと見つめていれば、不意にそんなことが口から零れた。
彼女の綺麗な白い手に、純粋な心に、深く突き刺さってしまったナイフの痛々しい傷。
俺は、椿木さんのことをまた守り切れなかったという事実に、悔しさで眉を顰める。
そうすれば、椿木さんは、俺の手に両手をそっと重ねると、ふわりと優しい笑みを浮かべた。
「…でも、タカちゃんは助けに来てくれたじゃん。あの時、どれだけ私が嬉しかったか…心強かったか……タカちゃん知らないでしょ?」
俺の瞳をまっすぐ捉えると、そう言って花が咲いたように笑った椿木さん。
「それに、タカちゃん達が来てくれなかったら、それこそ凛子本当に死んじゃってたかも。
………タカちゃんは私のヒーローだね!」
そこまで聴けば、俺は思わずギュッと椿木さんのことを抱き寄せていた。
柔らかい白い首元に顔を埋めれば、優しくて甘い椿木さんの香りが俺の心を満たす。
彼女の温もりに、息遣いに、心底安心する俺がいた。
椿木さんがいなくなっちまうかも、なんて考えたら、死ぬほど怖くなった俺がいたから。