I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
「……オイオイオイ…それって……」
「………まさか、ガソリンとか言わねぇよな。」
そこに会していた一同全員が詩織さんの異常な行動に目を見張る。
背中に嫌な汗が噴き出るのを感じた。
「…もしかしたらこうなるかもなって思ってたんだ。でもいいの。
…だって、詩織がここで火だるまになって死んじゃえばさ、ここにいるみーんな、私のこと忘れたくても忘れられなくなるでしょ?!
そうやって命を燃やすことで、詩織はみんなの心の中で永遠になる。
それって何よりも幸せなことだと思わない???」
詩織さんは恍惚とした表情でマリア像を見つめると、こちらにふわりと微笑みかけた。
そして、ポケットからマッチを取り出すと、ガッと木箱の横にマッチ棒を擦る。
真っ赤な炎が怪しく揺れた。
” バイバイ ”
そして、詩織さんの口がそう呟くと同時に、
火のついたマッチ棒が詩織さんの手から解き放たれるのと同時に、
椿木さんが飛んだ。
「…ッ椿木さん!!!!!」
一瞬の出来事。
眼前で繰り広げられるソノ光景は、スローモーションのように俺の瞳に飛び込んできた。
椿木さんが詩織さんに体当たりすると同時に、マッチの火が、床に零れ落ちたガソリンへと燃え移る。
瞬時に燃え広がる猛々しい炎が、2人の身体を包み込むまでコンマ1秒…
椿木さんがぶつかった勢いで、2人の身体は後ろのステンドグラスの下まで勢いよく吹っ飛んで、
轟々と真っ赤な炎が大きな火柱を作れば、そのすぐ脇で、詩織さんに跨った椿木さんが詩織さんの頬に盛大なビンタをかます。
バシンッと響いた乾いた音で、俺の世界はようやく時間を取り戻した。
「…ちょっと!!!…邪魔しないでよ!!!」
両目からボロボロと涙を溢す椿木さんは、そんな詩織さんの怒声にも、咄嗟に駆け寄った俺らの制止する声にも耳を傾けず、何度も何度も詩織さんの頬をぶった。
詩織さんの頬をぶつ度に、椿木さんの掌からは鮮血が飛び散る。
「…椿木さん!!!…気持ちはわかるけど、流石にもうやめとけって、な?傷口にもよくねぇから。」
流石に見かねて、俺が椿木さんの腕を掴めば、椿木さんは肩を上下に動かしながら、 「……ふざけんな」 と吐き捨てた。