I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
「…ごめんな、もうちょっとだけ待ってられるか?」
椿木さんの事をそっと離した俺は、そう椿木さんの顔を覗き込む。
そうすれば、まだ震えている椿木さんはコクコクと首を縦に振った。
俺は羽織っていたMA-1を椿木さんの肩にかけてやると、駆け寄ってきた藍沢さんと八戒に椿木さんを託す。
「……さてと、どう落とし前つけてもらおうか、クソ女。」
クルリと、先ほどぶん投げた詩織さんの方に身体を向ければ、詩織さんは高らかな笑い声をあげた。
「……あぁ…いったぁ~い……思ってたよりも、ちょーっと隆くんの登場が早かったから、君がボロボロになって泣き崩れる姿は見れなかったなぁ残念だなぁ。……でも、その怒りに満ちた表情もまた…最高にイイなぁ……」
薬がバチバチに決まってるかのような異常さに、俺はまた眉を顰める。
「……あ゛?何言ってんだテメェ。」
「アッハハハハハ!!!……それで?詩織のことどうするつもり?………殴る?蹴る?殺す???」
「……逝っちまってんな。」
高らかに声を上げる詩織さんの胸糞悪ぃ言葉と、遠くでこちらを見守る八戒の声が静かに響いた。
「…詩織さん……アンタ…一体何がしてぇの?」
壁にもたれてこちらを楽しそうに見上げている詩織さんを見下ろし、そう呟けば、
「………ハハッ…何がしたい?
…そんなん決まってんじゃん。ただの八つ当たりだよ。
愛を求めてやまない少女の逆恨み。」
そう言って、詩織さんはハハッと自嘲するように笑みを零した。
「………あ゛ぁ?!八つ当たりとか、逆恨みとか、そんなんで許されることじゃねぇだろうが!!!」
俺が思わず胸倉を掴めば、
「……うるさいなぁ、隆くんには私の気持ちなんかわかんないよ。」
そう言って詩織さんは俺の手を振り払う。
そして、近くに置かれていたバケツを手に取ると、フラフラと覚束ない足取りで、先程まで椿木さんが横たえられていた献呈台の上へと上った。
「……オイ、このサイコ女!!!テメェ今度は何しようとしてんだよ!?」
椿木さんの背を撫でていた藍沢さんが、詩織さんの不可解な行動に吠えれば、
詩織さんはふわりと微笑む。
そして、手にしていたバケツを頭上高く掲げると、バシャンッと自身にその中身を勢いよく落とした。