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I don’t want to miss a thing.

第1章 …I'll be there for you.




「…私が偶々、そこのしょうがない先輩と待ち合わせしてて、偶々、拉致られるのを見つけて追いかけてきただけなんで。部長には連絡する余裕なかったんですよね。」

「…ふーん、本当に?さっきバイクの音聴こえた気がしたけど、空耳?」

「……ハハッ、それは私が倒しちゃった外の奴らの最後の雄叫びじゃないッスか?ほら、部長のインパルスの排気音って少し狼の遠吠えっぽく聴こえなくもないでしょ?」

藍沢さんがそう煽れば、詩織さんのコメカミがピクッと動く。

「………アンタ、面白い事言うね。……まぁギャラリーが1人増えるくらい、どうってことないか。…じゃあ、凛子ちゃん、続き…しよっか♡」

「ん゛!!!ん゛―――ッッッ!!!」

俺は詩織さんの持つナイフが振り上げられたのを見れば、咄嗟に駆けだした。




「……………詩織さん……俺、アンタにちゃんと忠告したよな?」



ナイフが椿木さんの綺麗な瞳に振り下ろされる寸前、刃を素手で掴む。

左手に鋭い痛みを感じながら、驚いたように大きく目を見開いた詩織さんのことをキツク睨めば、

詩織さんは、ゆっくりとこちらに顔を向け、嬉しそうに顔を綻ばせる。

「…ほーら、やっぱり隠れてたじゃん、隆くん♡」

「ん゛ん゛ん゛!?!?」

臆することなくこちらをジィッと見つめる大きな瞳の瞳孔は開きっぱなし、狂気が滲むその瞳に、俺は思わず眉を顰める。

「………女に手ぇ挙げるなんてしたかねぇが、忠告はしたんだ。…俺は今、大事なモンを守る為に力を使う!」

そして、ナイフを持っていない手で詩織さんの腕を掴むと、力の限り、思いっきりぶん投げた。

「……………ッつ!!」

すると、カランカランッとナイフが床に転がり落ちる乾いた音が響き渡る。

俺は、床に転がったナイフを拾うと椿木さんの手足首に巻き付けられているロープを切った。

そして、椿木さんを抱き起して、口に咥えさせられている布を解いてやれば、椿木さんは、

「……ダカ…ち゛ゃん…!!!」

と、ボロボロと大粒の涙を零した。

「………悪ィ、待たせちまったな。」

痛ましい椿木さんの姿に、ギリッと奥歯を噛みしめる。

そして、びしょ濡れの所為か恐怖でか、未だガタガタと震えている椿木さんのことをギュッと強く抱きしめた。

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