I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
「……ん~いい顔♡
…どう?啖呵切る相手を間違えたってこと、そろそろ理解した?
ダメだよ、ケンカ売る相手はちゃんと選ばなきゃ♡」
私の様子を満足そうに眺める西園寺先輩。
そして彼女は、ポケットから鋭利なナイフを取り出すと、おもむろに立ち上がる。
すると、ステンドグラスから漏れている月明かりが、先輩の右手に握られたナイフの刃先をキラリと鈍く照らした。
「…さてと、悪い子には罰を与えなきゃ。」
「ん゛――ッッッ!!!ん゛――――ッッッ!?!?」
「……私ね、あなたが羨ましくて仕方ないの。私が努力しても努力しても手に入れることが出来ない愛を沢山手にしているから。
…ねぇ、どうして?手にしてる沢山の愛の内のたった一つくらい、私に譲ってくれたってよかったんじゃない?
もしも神様なんて存在が本当にいるのなら、本当に不公平だよね。
だって、どうして一方には有り余るほどの愛を与えるのに、もう一方には一滴も愛の雫を与えてくれないの?」
ザクッ
「ん゛――――――――――ッッッ!!!」
鋭い刃が私の右掌に突き立てられれば、私は痛みのあまりに、目を見開く。
「ん゛―――――ッッッ!!!ん゛―――――ッッッ!!!」
「……もしもあなたが見るのも忍びないくらいボロボロにされて、目の前で息絶えてったら、隆くんはどんな顔すると思う?
泣き叫ぶかな?怒るかな?それともすぐに心が壊れちゃうかな?
どっちにしたって、あなたと隆くん2人がボロボロになっていく様子は私をこの上なく満たしてくれると思うんだ。
だから、椿木凛子ちゃん。私の為に死んでくれる?」
そこまで言うと、先輩は私の右掌を貫通したナイフを引き抜いて、今度は左掌にソレを突き刺した。
「ん゛―――――ッッッ!!!
ん゛ん゛―――――ッッッ!!!」
のたうち回るような激しい痛みに、狂気に満ちた先輩の笑顔に、私は発狂する。
そして、声にならない痛みと恐怖を代弁するかのように、大粒の涙だけが私の頬をボロボロと零れ落ちた。