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I don’t want to miss a thing.

第1章 …I'll be there for you.



「……ねーえ?………一番、苦しい死に方って何だと思う?生きたまま焼かれること?それとも溺死?それとも絞殺?もしくは撲殺?」

ゆるりと美しく弧を描いた口元から吐かれる残虐な言葉。

その言葉の裏に隠された意図がまるで予想出来なくて、私は冷や汗を流す。

「…じゃあ逆ね、一番、楽な死に方って何だと思う?ガスとか一酸化炭素中毒で意識を手放すこと?それとも感電死?それともオーバードーズ?もしくは意外と失血死とか凍死かな?」

「ねぇどう思う?」


これまで見たことがないような狂気に満ちた瞳。

楽しそうに歪に曲げられた口元。

西園寺先輩は、マリア像を恍惚とした表情で見上げると、再び口を開いた。

「…でも詩織が思うに、一番苦しいのって、

例えば、最愛の人とかが目の前で殺されちゃうみたいな、トラウマになるくらいの残虐な事件に遭遇したりして、

寝ても覚めてもその光景が忘れられなくて、神経衰弱になって死んでいく…

そんな死に方なんじゃないかなぁって思うんだよね。

でもね、それってある意味、殺された側からしたらすっごく幸せなことじゃない?って思うの。

だって、最愛の人が死ぬ直前まで自分の事で頭が一杯なんだもん。そんな幸せなことってある?」


淡い月明かりに照らされながら、淡々と言葉を吐き出していく西園寺先輩の姿がどこか現実離れしているように思えて、私は思わずゴクリと固唾をのむ。

そして、これから彼女が自身に何をしようとしているのか思考を巡らせれば、恐怖に涙を滲ませた。

威勢よく啖呵を切った相手がこんなにも狂気に満ちていたなんて。

こんな展開が待っていたなんて、誰が予想出来ただろう?


” 殺サレル……? ”


ふと、そんな言葉が脳裏に浮かんだ。

ドクンッ…ドクンッ…と早馬が駆けるように警鐘を鳴らす私の心臓。

早くここを離れなくては、

この女から距離を取らなくては、

誰かに助けを求めなければ、

とにかくヤバい。

そんな私の生存本能が身体中で騒ぎ出した。


「ん゛ん――ッッッ!!!ん゛ん゛ん゛――――ッッッ!!!」


けれど無情にも、どんなに声を張り上げてみても、くぐもった声は煙たさの中にのみこまれてしまうし、どんなに手足を動かそうとしても、ジワリと血が滲んでいくだけ。

素直な身体は、命の危険を察知してガクガクと情けなくも震え出した。

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