I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
椿木さんを病院に送り届けると、俺はルナマナを八戒に預けて、公園のベンチで次の手芸コンクールの課題に取り組んでいた。
そうしていれば暫くして、不意に着信音が鳴り響く。
休日の昼間から電話かけてくるなんてマイキーかドラケンのどっちかだろうと、俺はシカトを決める。
しかし、一向に鳴りやむ気配のないコールに疑問を覚え、携帯を手に取れば『藍沢ミズキ』と予想外の名前が表示されていた。
時刻を見れば、15:30を少し過ぎた頃。
もうそろそろ椿木さんと合流しててもおかしくないはず。
不思議に思って通話ボタンを押せば、『あ!?三ツ谷先輩!?』と酷く慌てた藍沢さんの声が耳に響いた。
「おー、藍沢さん。んな慌ててどうしたよ?」
「……今?公園で妹達の面倒見ながら今度のコンクールの課題やってっけど。」
今どこかという問いに何の気なしにそう答えれば、
” 凛子さんが緊急事態!知らない男の車で拉致られた!!! "
なんて、衝撃的な事実が告げられて、俺は目を見開く。
「……………は?」
突然のことに俺が唖然としていれば、『現在地と行き先は随時メールするんで!!!』なんて藍沢さんは有無を言わさず電話を切った。
そして、時間を空けず直ぐ届いた藍沢さんからの現在地と向かっている方面が書かれたメール。
それを目にすれば、俺は咄嗟に我に返ってベンチから腰を上げた。
「ルナマナ…兄ちゃんたち急いで出なきゃいけない用事が出来ちまったから、家で大人しくしてられるな?」
急いでルナとマナの元へと向かい、2人の目線に合わせてしゃがみ込めば、
「何々?タカちゃん、おっかねぇ顔して何かあったのかよ?」
と2人に手を引かれていた八戒が少し緊張した面持ちでこちらを覗いた。
ルナとマナに聞こえないように、八戒の耳元で「……椿木さんが拉致られた。」と小さく口を開く。
そうすれば、
「…はぁ!?!?!?凛子ちゃんが拉致られた!?!?!?一体誰にだよ!?!?!?」
なんて八戒は俺の意図に気付くわけもなく大声を出した。
俺はそんな八戒にはぁーと小さく溜息をつくと、
「………心当たりはある……八戒、巻き込んで悪ィけど、俺の後ろで方向指示してくんねぇかな。行先は随時連絡入る事になってっから。」
と再び口を開く。